千歳・大石法律事務所は横浜・関内の法律事務所です。

横浜・関内 千歳・大石法律事務所

前回は、夫婦が合意分割の分割割合(按分割合)について合意し、これを公正証書や公証人による認証の形でまとめる方式について説明しました。

今回は、夫婦の合意ではまとまらず、やむをえず裁判所の力を借りて分割割合を決定する手続について説明いたします。

なお、繰り返しになりますが、年金分割の中でも3号分割では、そもそも分割割合について合意する必要はありません。ただ、3号分割の対象となる年金記録は平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間の年金記録に限られるので、そこは注意して下さい。

1 年金分割の割合を定める調停 

さて、分割割合でまとまらない場合にどうするかですが、最初の選択肢は「年金分割の割合を定める調停」です。

この点、この年金分割の割合を定める調停は、離婚が既に成立していて決まっていないのが分割割合だけ、という場合や、離婚や他の条件(親権や財産分与、養育費など)では合意しているけれども、年金分割だけ合意できていない、といった場合に申し立てられるのですが、これは逆に言えば、離婚やその他の条件の話し合いがまとまっていない場合は、これらの調停(離婚調停)と併せて申し立てることもできるということですので注意してください。

① 申し立てる場所

申し立てる場所は、相手方の住所地を管轄する裁判所か当事者が合意によって定める家庭裁判所です。

例えば、相手方が横浜市戸塚区に住んでいれば横浜家庭裁判所に申し立てることになります。

② 申立書の作成方法

どうやって申し立てるかですが、家庭裁判所に行くと「家事調停(請求すべき按分割合)申立書」という決まった書式がありますので、そこの「申立の趣旨」の「申立人と相手方との間の別紙(☆)      記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を、(0.5/(     ))と定めるとの(調停/審判)を求めます」という記載を確認した後、そこの(☆)の部分には「年金分割のための情報通知書」という言葉を記載し、「0.5」「調停」とある部分にチェックマークを入れてください。

0.5にチェックをいれるのは、合意分割の分割割合の上限が0.5であり、実際に調停や審判で定まる分割割合は0.5がほとんどですので、ここであえて不利な割合を記載する必要がないからです。

他にも書くところはありますが、家庭裁判所でも色々と教えてくれますし、弁護士に相談すれば書面の作成などのヒントも教えてくれることでしょう。

③ 申立てに必要な書類

次に申し立てに必要な書類ですが、①戸籍謄本、②年金分割の為の情報通知書

になります。

④ 申立の費用

よく聞かれる年金分割の割合を定める調停の費用ですが、収入印紙1200円分と郵便切手でだいたい800円程度(80円切手×10枚くらい)です。

ここまでそろえた 上で、家庭裁判所に調停の申立をすることになります。

2 年金分割の割合を定める調停の進め方

家庭裁判所での申立が受理されますと、いよいよ調停の期日が定められることになります。

調停期日では、男女2名の調停委員(多くは40代から60代くらいまでの社会経験豊富な一般の方です)が間に入って分割割合について双方の調整を図っていくことになります。

ただ、年金分割割合に限って言えば、ほぼ全てが0.5という形で運用されていますので、調停自体も結局は0.5でまとまるように、何とか相手方を説得するという形で行われることが多いですね。

それでも話がまとまらないこともありますが、この場合は、原則として審判に移行し、その後は審判官(裁判官)が、職権で割合を定めることとなります。

この場合余程のことがない限り、割合が0.5を下回ることがありません。

なお、一つだけ注意していただきたいことがあります。

これは、年金分割の請求手続は、原則として、離婚をした日の翌日から起算して2年を経過した場合には、することができないこととされているので、この期限を過ぎた場合には、家庭裁判所に対して調停の申立てをすることはできないということです。

つまり期限がありますので、十分注意して下さい。

ところで、そうだとすると、調停をしている間に2年が過ぎた場合はどうするかが心配になりますね。

この場合には、調停が成立した日の翌日から起算して1か月を経過するまで年金分割の請求をすることができます

心配はいりませんが、この場合も「1か月」という期間制限には注意しなければなりません。

3 調停調書

めでたく調停で分割割合について合意すると、申立人と相手方、審判官(裁判官)、書記官、調停委員が同席のうえ、審判官が合意した内容をを読み上げ、これを書記官が調書にまとめる形で調停が成立します(場合によっては申立人と相手方が同席しないこともあります)。

「読み上げ」というと違和感がありますが、これは本当で、「申立人と相手方との間の別紙記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定める」と述べ、これを書記官が調書化して調停が終了することになります。

調停委員も代理人弁護士もほっとする瞬間ですね。

その後、書記官から年金分割の際に必要となる調書の交付(受け渡し)について説明がなされ、必要な印紙(書記官に教えてもらえます)を買って交付申請をし、後日調書を郵送か手渡しで受領した後、年金事務所で年金分割の手続をすることになります。

かなり詳しく調停の手続を説明しましたが、おわかり頂けたでしょうか?

少しややこしい部分がありますし、調停自体は交渉の場なので、不安な方は一度弁護士に相談するだけでも安心するでしょう。

次回は社会保険事務所での年金分割の手続について説明いたします。

 


これまで、「離婚と年金分割①」では、年金分割の基礎知識としての年金制度の簡単な説明、「離婚と年金分割②」では「3号分割」の説明、「離婚と年金分割③」では「合意分割」について説明して参りました。

わかりにくい制度を簡潔に説明しなければならなかったので、多少言葉足らずな部分があるかもしれませんが、詳しくは弁護士に相談して頂ければと思います。

さて、今回は、具体的な年金分割制度の手続について説明します。

なぜここで手続の説明?と思うかも知れませんが、実は年金分割は色々な資料を用意しなければならなかったり、資料が足りないことが理由で、改めて役所で書類を取り寄せるなどして、年金事務所での待ち時間が無駄になったり、とにかくいらいらすることがあるからです。

1 年金の按分割合の合意(公正証書の作成の仕方)

説明の順番ですが、今回は、現実には多数派を占めている「合意分割」で必須の手続である「年金の按(あん)分割合(分割割合)」の合意の仕方についてまずは説明いたします。

年金分割の最初のハードルということになりますね。

まず、年金の按分割合(分割割合)について定める方法としては、離婚した夫婦が合意の上で割合を定める方法が原則です(合意できない場合は、裁判所を通して按分割合を定めることになります)。

そして、按分割合の合意については、公正証書にするか、合意を記した書面について公証人から認証を受けておくことが必要です

さて、公正証書の作成や公証人からの認証は公証役場で行うことになりますが、そもそも公証役場とは、公正証書の作成、私文書の認証、確定日付の付与等を行う官公庁のことで、大きな町なら大体あります。

公証役場には、「公証人」という方がおり、その方が公正証書を作成したり、書面を認証したりするわけです。

なお、「公証人」には、例えば検察官や裁判官を退官された方など、法曹資格をもっている方が就任することがほとんどです。

そして、年金の按分割合について合意した夫婦は、公証役場に2人で行って公証人の前でその合意について記した公正証書を作成して貰うか、予め合意について記した文書に認証印を押して貰うわけですね。

もちろん、公証には費用が掛かりますが、びっくりするような金額ではありません。詳しくは公証役場に問い合わせてください(おおよそ公正証書だと1万円強くらいかと思います)。

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2 年金分割のための情報通知書

さて、公証役場で按分割合の合意について公正証書を作って貰うか認証して貰うためには、もう一つ重要な文書を予め取り寄せておく必要があります。

これは、「年金分割のための情報通知書」です。

この「年金分割のための情報通知書」とは、要するに、今後年金を分割をするにあたっての基本的な情報が記録されている書類であり、制度として、年金分割にあたって按分割合の合意を書面化するためには、この「年金分割のための情報通知書」を添付しなければなりません。

この書面は、社会保険事務所でもとることができますし、郵送でも取り寄せが可能ですが、いずれにしましても、請求には「年金分割のための情報提供請求書」という決まった書式に必要事項を記載し、これに年金手帳、戸籍謄本(抄本)、事実婚期間がある場合は住民票等をあわせて提出すれば、発行されます。

ちなみに、私は年金分割のための情報通知書を依頼者にとってもらうときは、極力社会保険事務所で直接の手続をしてもらうことにしています。といいますのも、年金分割のための情報提供請求書がややこしくて、社会保険事務所の職員とあれこれやり取りしながら書いた方が結果効率がいいからです。

こうしてようやくとれた年金分割のための情報通知書ですが、手間がかかるので、離婚の話し合いをする前に予め取り寄せておいたほうがいいでしょう。

(次回に続く)


2 合意分割制度

前回の3号分割制度に引き続き、「合意分割制度」についてご説明いたします。

合意分割制度とは、夫婦が平成19年4月1日以後に離婚した場合に、当事者双方の合意または裁判手続により按分割合を定めることを前提として、当事者の一方からの請求により、婚姻期間中の年金(年金記録)を当事者間で分割することができる制度のことをいいます。

そして合意分割は当事者双方が請求可能であり、この点が第3号被保険者からの請求に限られている3号分割と異なります。

少しわかりにくいので具体的に説明いたします。

例えば、平成10年4月1日に結婚した夫婦が、平成25年5月31日に離婚したとしましょう。

そして、夫が給与取りで妻が被扶養者、つまり第3号被保険者であったとします。

そして、夫は結婚後離婚まで一貫して会社に勤めていた。つまり、婚姻期間中は厚生年金に加入していたとしましょう。

この場合、妻は第3号被保険者であるわけですから、年金分割も3号分割、つまり、按分割合は当然に2分の1になる、と考えがちです。

ところが、それは大きな誤解です。

もう一度思い出して下さい。3号分割の適用があるのは、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間の年金記録ですよね。つまり、対象となるのは平成20年4月1日以降の年金記録(しかも第3号被保険者期間の年金記録)であって、それ以前は3号分割の対象ではないのです。

そして3号分割の対象ではない、ということは、合意分割の制度を利用しなければならないということなのです。

つまり、今回の具体例に則して言いますと、離婚の際、少なくとも平成20年4月1日以前の年金記録については、当事者が合意するか調停や審判などで按分割合を定めなければならないわけです。

他方、平成20年4月1日以降の年金記録については、3号分割制度が適用されることになります。

よって、今回の例では、結局、年金分割については合意分割の分(平成20年4月1日以前の年金記録)と3号分割の分(平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間の年金記録)が、併存することになるのです。

ということは、妻が離婚後年金分割の請求をする場合、合意分割と3号分割の双方を請求しなければならないことになり、大変面倒ですよね。

これにはちゃんと手当てがあって、合意分割の請求が行われた場合、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます

つまり、一部3号分割の期間があっても、合意分割の請求をしておきさえすればいいわけですね。

以上をまとめると、3号分割以外の分割が含まれる場合は、合意分割制度を用いて分割することになるが、合意分割制度と3号分割制度が併存する場合は、合意分割の請求をすれば、3号分割の請求があったものとみなされる、ということになります。

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なお、ここまで読んできた皆さんの中には、「それでは3号分割制度が実際に使われる場面は少ないのではないか」と思われた方も多いかも知れませんね。

それ正解です。実は、年金分割制度自体、平成19年4月1日以降の離婚に対して適用されることから分かるように、最近の制度なのです。

そのうち、3号分割制度は本来離婚に伴う年金分割の原則的な形態になるはずなのですが、その適用自体が平成20年4月1日以降になってしまうために、平成20年4月1日以前から結婚をされていた相対的に多くの夫婦についてはどうしても合意分割を用いざるを得ないわけですね。

ただ、これから時代が流れ、平成20年4月1日以降に結婚された夫婦が大多数になったならば、3号分割が多数派になるかも知れません。

つまりそういうことなのです。

それから、もう一度繰り返しますが、年金分割の制度を利用することができるのは、平成19年4月1日以降に離婚した場合(合意分割の場合)であり、かつ原則として離婚の日の翌日から2年を経過しない期間内に年金分割の請求をしないといけません。

按分割合を定めただけでは年金分割を請求したことにはなりませんので、くれぐれも請求を忘れないようにしてください。

 


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代表弁護士の千歳です。
さて、私は以前ヤフーでブログを少しやっていたのですが、今年から本HPでコラムを書くことになった関係で、従前のブログは少し法律問題から離れた雑談めいたものを中心に細々とやっていくことといたしました。

その関係で、今日過去のブログの内容を整理していたのですが、法律相談に臨む方に向けた説明が見つかりました。

離婚関係事件の相談に臨むにあたって(相談者編)と多少重複する部分があると思いますが、以下リンクを貼っておきます。

弁護士千歳博信の徒然草

 

現在と状況が変わっている部分がありますが、お時間があるときにお読み頂ければと思います。


離婚と年金分割の続きです。

前回は年金分割の対象となる年金は老齢厚生年金(共済年金)であり、老齢基礎年金や確定拠出年金などは分割の対象にならない、という話をいたしました。

今回は、どのようにして年金を分けるのか、制度をかいつまんでご説明いたします。

まず、年金分割制度には、合意分割制度と3号分割制度があります。

ここで大体多くの説明は「合意分割制度」から始まるのですが、便宜上「3号分割制度」から説明することといたします。

1 3号分割制度

まず、「3号分割制度」というのは、夫婦が平成20年5月1日以降に離婚をした場合で、平成20年4月1日以降に、国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)がある場合に、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間における年金(正確には「年金記録」)を分割するというものです。

この場合、年金の按分割合(平たく言えば分割の割合)は、当然に2分の1となり、当事者の同意はいりません

まず「第3号被保険者」とは何か、というのがわかりにくいですよね。

第3号被保険者とは、ものすごくわかりやすくいえば、会社員や公務員など「給料取り」

に扶養されている配偶者のことをいいます。

ちなみに、会社員や公務員といった「給料取り」は第2号被保険者といい、私のような自営業者や学生は、第1号被保険者といいます。

よく、「扶養」から外れないようにパートタイマーやアルバイトなどの働き方を調整する方がおりますが、これは、第3号被保険者から外れないようにすることも理由の一つとしてあるわけですね。

さて、こうして会社員や公務員などに扶養されている配偶者のことを第3号被保険者といいますが、この資格を有する方が離婚をした場合は、少なくとも平成20年4月1日以降、離婚するまでの第3号被保険者期間中の年金(厳密には年金記録)は、当然に2分の1に分割されるわけです。

例えば、平成20年10月1日に結婚し、平成25年5月31日に離婚した夫婦がいたとします。この場合、仮に元妻が婚姻期間中一貫して夫(サラリーマン)の扶養に入っていたとすれば、婚姻期間中の夫の年金(年金記録)は当然に2分の1に分割されます。

このように、3号分割制度は、当事者が同意をしなくても当然に年金(年金記録)が2分の1に分割されることになるので、とても簡単で楽であるといえます。

しかし、そこには重大な落とし穴があります。

もう一度思い出して欲しいのですが、3号分割制度は、平成20年4月1日以降の年金(年金記録)に対して適用されます。つまり、平成20年4月1日以前の年金記録については、当然に2分の1で分割されるわけではないのです。

とういうことは、例えば平成10年に結婚した夫婦が平成25年5月に離婚した場合、平成20年4月1日以降の年金(年金記録)については、3号分割で2分の1の按分で分割がされますが、逆にいえば、平成20年4月1日より以前の年金記録について分割するには、別途後に述べる「合意分割制度」を利用しなければならないのです。

それから、3号分割制度の対象となるのは、平成20年4月1日以後の3号被保険者期間の年金記録だけです。ということは、平成20年4月1日以後であっても、例えば給与を得るなどして扶養から外れてしまい、3号被保険者出なくなった期間がある場合は、この期間の年金記録については、やはり後に説明する「合意分割制度」を利用しなければなりません。

一見便利なようで、その適用には時間的にも内容的にも制限がある「3号分割制度」。

そのようなわけで、今仮に離婚をされる方は、多くが次にお話しする「合意分割制度」を利用することになります。

(次回に続く)

 


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今回は、年金分割についてのお話です。

さて、これから様々な理由で離婚を考えておられる方であれば一度は「年金分割」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

そして、中には年金分割があるから老後の生活は安心だ、ということで離婚に踏み切る方もいらっしゃるかも知れません。

ただ、実際年金分割の制度について詳しくご存じの方はどれくらいおられるでしょうか?

例えば年金分割をすれば、夫の年金の半分を受け取ることができる、と考えている方はいないでしょうか?

これは大きな誤解であり、後で後悔しないためにも、年金分割制度について少なくとも概要は理解しておかなければなりません。

そして、制度の概要を理解することで、より具体的に離婚の意味について理解することができるのです。

1 年金の種類

まず、年金分割を理解するためには、年金の種類について知っておく必要があります。

① 老齢基礎年金

老齢基礎年金とは、国民年金に原則として25年以上加入した人が65歳から受ける、全国民に共通した年金のことをいいます(1階部分)。

原則として学生さんでも、自営業者でも、またサラリーマンや専業主婦も皆等しく加入が義務づけられている年金です。

② 老齢厚生年金(共済年金)

他方、老齢厚生年金とは、厚生年金に加入していた人が、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしたときに、65歳から老齢基礎年金に上乗せして受ける年金のことをいいます(2階部分)。

例えば会社に勤めている人が会社が半分負担する形で加入している年金の多くが厚生年金です。

公務員や私立学校の教職員が加入する共済年金もこれに含まれます。

③ その他の年金等

その他、確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金などがありますが、これは要するに基礎年金や厚生年金にさらに上積みされる部分の年金(3階部分)のことです。

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2 年金分割の対象となる年金は厚生年金

ここで、重要なのは、年金分割の対象となるのは、老齢厚生年金であり老齢基礎年金ではないということです(なお、正確には分割の対象となるのは「厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)」ですが、ただでさえ分かりにくい年金分割制度がさらにわかりにくくなりますので、便宜上「年金を分割する」という表現をとることといたします)。

またいわゆる企業年金(確定給付企業年金、確定拠出年金等)も年金分割の対象となりません。

つまり、老後の年金支給額が例えば合計月額20万円であっても、そこには厚生年金のほか基礎年金やその他の企業年金が含まれており、その半額の10万円が離婚後に当然受け取れるわけではないのです。

それから大事なのは、年金分割の対象となるのは夫婦の婚姻期間中の部分だけです。

ですから、仮に基礎年金や他の年金を差し引いて純粋に厚生年金の支給額を計算したとしても、厚生年金に加入すると同時に結婚したというような場合でない限り、純粋に半分受け取れるということにはならないわけです。

このように、年金分割を理解するにあたっては、①分割されるのは厚生年金だけであること、基礎年金やその他の企業年金は含まれないこと、②分割の対象となるのは婚姻期間中の部分に限られること、この2点は最低でも頭に入れておく必要があります。

(次回に続く)


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前回は離婚事件と親権について、ある程度争いの背景にまで遡って説明いたしました。

そこで、今回は、具体的に親権者の指定にあたってはどのような事情に着目がされるのかについて説明いたします。

これは、母親側から言えば親権を着実に認めて貰うための防衛ラインであり、父親側からいえば、親権を逆に認めて貰うための具体的な攻撃ポイントまたはアピールポイントということになります。

さて、調停や裁判の中で親権が争われることはよくありますが、その際、裁判所から、双方の当事者に対して、「陳述書」の提出を求められることがあります。

この陳述書とは、要するに、親の子供に対する実際の監護の状況や監護の意思を確認するためのものですが、それでは抽象的で何を書いて良いのかわかりませんよね。

そこで、裁判所は事前に「陳述書の記載項目及び提出資料」(横浜家庭裁判所)という資料を当事者に渡した上で、実際に監護している親と監護していない親のそれぞれについて、「こういった内容について説明して下さい」、といった指示をするのです。

例えば実際に監護している親が書く陳述書には、具体的には以下の項目についての説明を求められます。

1 監護親の生活状況

 ・生活歴(学歴、職歴、病歴、家庭生活や社会生活における主な出来事等)

 ・職業、勤務先、勤務時間及び仕事の内容等

 ・平日及び休日の生活スケジュール

  等

2 経済状況

 ・収入〈資料:源泉徴収票、確定申告書など〉

3 子の生活状況

 ・子の生活歴及び監護状況(監護補助態勢も含む。)

 ・子の発育状況及び監護状況〈資料:母子健康手帳など〉

 等

4 子の監護方針

 ・今後の監護方針

 ・親権者となった場合の監護状況の変更の有無及びその具体的内容

 等

5 その他参考となる資料

以上抜粋であり、実際にはもう少し項目がありますが、いずれにしても、ここで記載されている項目こそが親権の判断に際して重視される事項ということになりますから、実際に子どもを監護している親であれば、これらの項目で問題点を指摘されないように、時に第三者の力を借りるなどして養育環境の整備を行っていくことが重要となります。

他方、実際には監護をしていない親については、これとは別に「子との交流の状況」や「予定している監護環境及び監護態勢」「監護補助者の有無及びその氏名、年齢、住所」「親権者となった場合の非親権者と子との交流についての意向」などの記載が求められます。

監護をしていない親が親権を獲得するためには、これらの事項につき、いかに具体的に、説得的に説明ができるかが最初の関門といえるでしょう。

以上のとおり、親権者の指定というのは、子どもの養育に沿う親を選定する側面から、かなり具体的な事情についてまで聞かれることがあります。

今回、陳述書で記載を求められる全ての項目について取り上げることはできませんでしたが、それぞれについて何に着眼して陳述書を作成すればよいかは、弁護士それぞれにノウハウがあります。

慎重を期するのであれば、一度弁護士にご相談されることも一つの方法でしょう。 


離婚事件において、親権についての争いはつきものです。

1 親権とは(父母共同親権の原則)
ここで親権とは、父母の未成年の子どもに対する養育保護を内容とする権利義務をいいますが、父母が婚姻している間は、父母が親権を共同して行使するとされておりますので(民法818条1項、3項)、婚姻中は、妻も夫も共同で未成年の子どもに対して親権を有していることになります。

2 離婚をすると親権はどうなるか
ところが、離婚をした場合は、裁判上の離婚の場合を除き、協議によって父母のどちらか一方を親権者に定めなければなりません(民法819条1項)。
離婚届を見てもらえば分かるのですが、届出書の書式に予め親権者を指定する欄が設けてあります。
つまり、離婚と同時に親権者を決める必要がありますので、親権者を誰にするかについての合意は事実上離婚前にしておかなければなりません。

3 親権者の指定は母親が有利
さて、一般的に子どもが幼いころは、母親の方が子どもの養育に占める割合が大きい場合が多いですよね。

そのため養育の苦労に比例して母親の方が子どもに対して身近に愛情を感じる機会が多いのが通常ですし、子どもも母親の愛情に呼応して成長していくのが通常です。

また、養育そのものの適性という観点からも一般的には母親が有利です(なお、あくまで一般論で、中には父親が専ら養育の中心である家庭もあることは承知しております)。

対して父親は、子どもが生まれた直後はなかなか父親としての実感がわきませんし、子どもと接する機会が母親に比べて少ないですので、何となく最初の内はお客さんのような立場になってしまうことが多いですよね。

養育の適性についても、一般的には母親と比較する限り不利な面は否めません。

ですから、社会一般的には母親が親権者として相応しいと思われていて、調停や裁判上も、例えば母親が子どもと同居している場合で、その他母親が親権者として相応しくないという特別な事情がない限りは、ほぼ9割以上の割合で母親が親権者に指定されているというのが現状です。

このように、離婚事件においてこと親権に関しては母親が間違いなく有利な立場におりますから、もしも自分が母親で親権が欲しいと思っているのであれば、その有利な立場が失われないように、子どもとの同居を継続するほか、養育環境において問題があると指摘されないように、子どもの健やかな養育環境の整備に努力すればよいことになります。

他方父親が親権をとろうとするならば、それだけでハンデがありますから、例えば別居の時点で話し合いなどで子どもを自ら引き取るなどして、養育の既成事実を確立させるなどの特段の努力が必要となります。

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4 離婚の際に親権でもめる理由
なお、これだけ不利な立場にいる父親つまり夫側ですが、それでも親権に関する争いは頻繁にあり、調停でも親権を誰にするかだけで話し合いが空転することもよくあります。

理由はいくつかあろうとは思いますが、その一つであろうと思われるのは「夫の未練」です。
離婚の話し合いでは割合的には妻側が離婚を求める場合が多いのですが、この場合、夫が最終的には離婚に応じたとしても妻との共同生活に対する未練が残っている場合がよくあります。
この場合、夫としては妻に本音では戻ってきて欲しいのですが、それがかなわないことが分かっていますので、あからさまに「戻ってきてくれ」とはいえません。
そうすると、夫は日常生活への未練の表れとして、生活の構成員である子どもくらいはせめて自分の手に残しておきたいという気持ちになるのです。

もう一つ考えられる理由は、自分の両親に対する遠慮です。
当然のことですが、祖父母にとって孫が生まれることはうれしいものです。ところが息子の離婚によって孫との関わりが制限されることになれば、やはり悲しいことですね。
息子である夫としては、そのような両親に対する遠慮から親権を争う姿勢を見せることがよくあります。

最後の理由は、妻に対する攻撃です。離婚の話し合いでやられっぱなしの夫としては、せめてもの抵抗として親権者の指定を持ち出すのです。

5 面会交流を利用した打開 
このように、親権者の問題は複雑な夫側の心情を反映し、紛糾することがよくあるのですが、どちらの立場でも共通して言えることは、まず子どもの幸せを第一に優先することですよね。
ですので、お互いの気持ちにとりあえずの「けり」をつけさせるために、私は、「面会交流」という新たなテーマを利用することがあります。
面会交流は別の項で改めて説明しますが、既に述べましたように、夫の不満は、子どもが日常生活からいなくなることの寂寥感や未練、そして両親に対する遠慮などがあります。
とすれば、そうした不満をできるだけ解消させるために、面会に対して母親が協力できる体制にあることを前提として、面会交流の具体的な内容を予め双方の合意で定めるようにするのです。
これは子どもの福祉からしても相応しい方向性ですので、裁判所も概ね歓迎してくれます。
親権の解決方法はこれだけではありませんが、例えば面会交流のように、第三の方法を持ち出すことで、膠着状態を打開することができる場合があるということで、あくまで一例として今回紹介した次第です。


前回離婚に伴う財産分与のお話しをしましたが、夫婦共同の財産といっても日々変動をしているわけですから、いつの時点での財産を基準に財産分与をするべきであるのかがよく問題となります。

これは、「分与対象財産についての基準時」という問題であり、離婚関係の法律相談でもよく質問される問題です。

分与対象財産についての基準時をさらに分析すると、財産を確定する時期とその財産を評価する時期の2つの問題に分けることができますが、実はこうした分類は弁護士や裁判所が議論すべき問題で一般の方であればあまり難しく考えなくても結構です。

大事なのは具体例です。

まず、預貯金については、別居時の残高が財産分与の対象となります。

生命保険などの解約返戻金相当額住宅ローンの残債についても別居時が基準です。

つまり、金額が定まっているものについては別居時です。

これに対し、不動産(別居時にすでにある不動産)は、裁判であったら口頭弁論の終結時の評価額ですし、それ以外でしたら現時点での評価額ということになります。株式などの有価証券についても同様です。

以上をまとめると、預貯金や生命保険の解約返戻金、住宅ローンの残債は別居時、不動産や株式などの価格評価が必要なものについては口頭弁論終結時(現時点)が基準です。

このように、財産分与は例えば預貯金などは基準時と実際に分ける時点とがずれることになりますが、それが案外くせ者です。

つまり、離婚を求める方は別居するだけで手一杯で、相手方の財産の調査などできていない方が多く、あとで財産分与をしようにも、手持ち資料が全然ないということがよくあります。

また、別居後相手方が将来を悲観するなどして好き放題財産を使ってしまい、財産分与時点では残高0ということもあったりします。

そうならないためにも、離婚を求める方は、別居の段階で、将来の財産分与を意識して、相手方名義の財産の把握をできる限り正確に行っておく必要がありますし、その後の相手方の財産の費消状況にも気を配る必要があるわけです。

いずれにしても別居については慎重な対応が必要ですから、心配であれば弁護士に相談するなどして対応を決めていくとよいでしょう。

 

 

 


離婚事件では、離婚の可否だけでなく、子供の親権であるとか、養育費、面会交通の問題に加え、慰謝料の請求や財産分与など多くの問題を一度に解決することが求められます。

特に財産分与は離婚当事者の間でもめることが多い問題であり、離婚そのものについては合意をしていたとしても、財産分与で折り合いがつかずに調停に持ち込まれるというのも多くあります。

ここで今回は離婚事件と財産分与をテーマとしてお話しいたします。

まず基本ですが、財産分与とは離婚した者の一方が他方に対して財産の分与を求めることをいい、それを大きく分けると清算的財産分与と扶養的財産分与、慰謝料的財産分与に分けられます。 この中で一番多く主張されるのは、清算的財産分与といわれるもので、要するに夫婦が共同して生活している中で作られた共有財産の清算を目的とする財産分与のことをいいます。

つまり、清算的財産分与で問題となる共有財産には、例えば夫婦の一方が結婚する前から持っていた財産であるとか、結婚後であっても親から相続した財産などは、含まれないわけです。

ちなみに、こうした清算的財産分与の対象とならない財産のことを一般に「特有財産」といいますが、実際の財産分与では、どれが特有財産で財産分与から外すかでもめたりするわけです。

なお、生命保険の解約返戻金(生命保険を解約した場合に払い戻されるお金、終身保険でよく問題となります)なども財産分与の対象財産としてよく問題となりますし、退職金や確定拠出年金なども現に退職していない場合でも、退職が近い場合である場合などは、仮に現時点で退職した場合に支給される退職金見込み額を前提に財産分与がなされることがあります。

もちろんこの場合でも、財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に形成されたものに限られますから、生命保険金の解約返戻金や退職金見込み額についても、掛けている期間を分母、婚姻期間を分子として、割合的に計算した額が財産分与の基礎とされることが多くなされます。

実に理屈っぽいですが、理屈では割り切りにくい離婚事件の中で財産分与は理屈が通りやすい数少ない問題ですから、請求する側と抵抗する側がせめぎ合う中で、必然的に理論的な枠組みが整備されていくようになったわけです。

大体夫婦での財産管理は古今東西喧嘩のネタによくなりますが、おおざっぱに分けるとすれば、夫婦間でなれ合いで管理されているか、夫婦の一方が独断で管理しているかのどちらかであることが多いですよね。

夫婦関係が円満であればそれでも良いのですが、離婚となりますと、そういった曖昧さが排除されて理屈先行で分けられることになります。

そのギャップこそが、財産分与で当事者がもめる原因の一つとも言えるわけですね。