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横浜・関内 千歳・大石法律事務所

千歳法律事務所の代表の千歳です。
さて、これまで調停離婚後の手続について3回に渡って説明して参りましたが、今回は最後のテーマ「子の氏と戸籍」です。
1 離婚と子供の戸籍との関係
まず、すでにお話ししてきましたとおり、夫婦(父母)が離婚すると、当事者の一方の戸籍は婚姻前の戸籍に移るか(復籍)、新戸籍を編製してそこに移ることになりますので、戸籍がばらばらになります。
ところが、父母が仮に離婚したとしても、子供の戸籍は影響を受けません。
つまり、子供の戸籍は離婚に関わらず父母の婚姻中の戸籍にとどまることになります。
そして子供の戸籍が従前の戸籍にとどまるということは、氏(つまり名字)も変わらないということになります。
例えば、AさんとBさんの間には子供Cがいて、AさんとBさんは協議の上離婚、親権者はBさんに指定されたとします。
この場合、Bさんの婚姻前の氏(旧姓)が例えば「鈴木」であり、Aさんとの婚姻によって「山田」に氏がかわったとすると、今回の離婚により、Bさんはもともとの戸籍に戻るか、新たに新戸籍が編製されて、そこに戸籍が移ることになります。
そして、Bさんの氏は「山田」から「鈴木」に変わります。
ところが、子供Cの戸籍は離婚でも移動がありませんので、Aさんの戸籍にとどまったままです。つまり、子供Cの氏は「山田」のままとなります。
このように、夫婦が離婚をすると、子供の戸籍と親権者の戸籍が異なり、氏も異なってくる可能性が出てくるのです。
以上の問題は、親権者が戸籍法77条の2の届出をして、婚姻中の氏(先の例でいえば「山田」)を続称した場合でも同じです。
2 子の氏の変更許可の申立
ではどうすれば、別の戸籍に移った親権者の戸籍に子供を入籍させることができるのでしょうか。
これは、家庭裁判所に「子の氏の変更許可の申立」を行い、裁判所の許可を得た上で、戸籍課に届出を行う、というのが答えです。
そこで「子の氏の変更許可の申立」の方法ですが、
① 子の住所地を担当している(「管轄」といいます)家庭裁判所に対して、
② 氏の変更を求める子供自身が「申立人」として、
申立を行う方法で行います。
この点、子供が15歳未満の場合、子供が単独で申立を行うことはできませんので、親権者(法定代理人)が子供の代理人として手続を行うことになります。
さて、「子の氏の変更許可の申立」の書式は、家庭裁判所に定型書式が備え置かれておりますので、そこに必要な事項を記入して申立することになるのですが、添付書類としては、
・父の戸籍謄本と母の戸籍謄本
になります。
戸籍謄本はそれぞれ1通で申立自体はできるのですが、役場に入籍届を出す際に別途入籍届を出す市町村と異なる本籍地の戸籍謄本が必要となりますので、念のため戸籍謄本は予め2通取っていた方がよいでしょう。
また申立費用ですが、収入印紙は子供1人につき800円、郵便切手は個々の裁判所によっても異なりますが、おおよそ80円切手3枚程度というのが相場です。
このように、「子の氏の変更許可の申立」は裁判所の手続であり、一見面倒くさそうですが、原則として許可にあたって細かい審査をするわけではありませんので、そのほとんどで問題なく許可はでます。
ですので、ほとんど心配はいらないのですが、もしも不安を感じているのであれば、弁護士に相談して手続を代わってやってもらってもいいでしょう。
3 許可が出た後の手続
さて、家庭裁判所より子の氏の変更の許可がでましたら、その「許可審判書謄本」を添付して、子供の本籍地の市町村役場かあるいは親権者の住所地の市町村役場で入籍届を出すことになります。
この点すでにお話ししたとおり、入籍届けを出す市町村役場が父又は母の本籍地と異なる場合は、その本籍地が異なっている戸籍謄本を改めて添付する必要がありますので、予め戸籍謄本は2通取っておいたほうが便利です。
このように、子の氏の変更は、手続自体は簡単なのですが、その制度の趣旨などを考えると結構複雑ですよね。
できるだけ丁寧にわかりやすく説明したつもりですが、一つ重要なことは、離婚をした際に、子供の戸籍や氏に関して、注意しなければならないことがあったな、といった程度の「気づき」です。
つまりこの「気づき」さえできていれば、後は制度を良く知っている弁護士や裁判所、市町村役場の戸籍担当者などに、その疑問をぶつけ、子の氏の変更について具体的な手続きを教えてもらうことができます。
現在法教育が叫ばれておりますが、法教育とは、細かい法律の知識や解釈を知って貰うということよりも、一般の方にいかに法的な問題及びそれに関連する問題に関する「気づき」のきっかけを身につけて貰うか、といったことが重要であると感じます。
皆さんも、この「気づき」を意識して本コラムを読んで頂ければ幸いです。


前回までは、離婚の届出の仕方や、離婚後の氏について説明して参りましたが、今回は、離婚後の戸籍について説明いたします。
まず、既にお話ししたとおり、結婚して氏を改めた者は、離婚により旧姓、つまり婚姻前の氏に戻りますが、引き続き婚姻中の氏を称する場合は、離婚の日から3か月以内に離婚の際に称していた氏を称する届出をすることで従前の氏を引き続き称することができます。
① 離婚によって婚姻前の氏に戻った場合
この点、離婚によって婚姻前の氏に戻った場合は、婚姻前の戸籍(例えば実家の戸籍)に戻る(これを「復籍」といいます)のが原則ですが、婚姻前の戸籍がすでに除籍になっている場合は、新たに新戸籍が編製されることになります。
また、離婚によって婚姻前の氏に戻った人で、別の本籍地に新たな戸籍を作りたい場合は、その者が離婚届の届出義務者であれば、離婚届書にその旨を記載すれば、希望する本籍地に新戸籍を編製することができます。
ここで、「離婚届の届出義務者」とは、離婚調停であれば、通常は申立人(つまり調停を申し立てた人、当初離婚を求めた人)ですが、調停の条項に「申立人と相手方は、相手方の申出により、離婚する」という文言が含まれている場合は、相手方つまり調停を申し立てられた人が離婚届出義務者になります。
この離婚届けの届出義務者を誰にするかは、結構重要ですので、調停が成立するまでにしっかりと方針を決めておきましょう。
② 婚氏続称の届出をした場合 
他方、従前の氏を引き続き名乗ることを希望し、届出をした場合(これを婚氏続称の届出といいます)は、必ず新戸籍が編製されることになります。
戸籍がどうなるかは、離婚の際によく依頼者の方から質問されることが多い事項ですので、まとめてみました。
次回は子供の戸籍についてお話しいたします。


前回は離婚の届出について説明いたしましたが、今回は、「離婚後の氏」についてお話しします。
まず「氏」とは、戸籍に記載されている「氏名」の「氏」のことをいいます。
そして、現在の民法では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」(民法750条)とされており、婚姻の時に話合って、夫が妻の氏を称するか、妻が夫の氏を称するか、を決めなければなりません。
これは裏をかえせば、婚姻により氏を改めた人は、離婚によって婚姻前の氏(旧姓)に戻ることを意味します。
これが原則です。
ただし、中には離婚によって婚姻前の氏に戻ることを望まない方もおられます。
改めた氏で長年仕事を続けてきており、いまさら旧姓に戻ると不都合な方などですね。
このような場合は、離婚の際に届出をすることによって、引き続き婚姻中の氏を称することができます。
その届出のことを「離婚の際に称していた氏を称する届」(戸籍法77条の2の届)といいますが、離婚の日から3か月以内という時間の制限がありますので、注意しなければなりません。
なお、この「離婚の際に称していた氏を称する届」は、離婚の届出と同時にすることができますし、本籍地で届出をする場合には戸籍謄本も不要なので簡単にできるのですが、一度届出をしてしまうと、後で改めて旧姓に戻りたいと思ったとしても、当然には戻ることができません
具体的には、家庭裁判所に「氏の変更許可」の申立をした上で、裁判所から許可を受けなければならないのです。
ですので、離婚時に氏をどちらにするかについては、よくよく検討の上で決めることが大事です。
この点ですが、弁護士の先生の中には、離婚が成立して一安心してしまい、こうした大事な点を説明しない方もいるかもしれませんので、皆さん自身が注意する必要があります。これまでは離婚をした当事者の氏の変更についてお話ししましたが、子の氏の変更は、また別ですので、次回にお話しすることといたします。


前回までは、夫婦関係調整調停(離婚)について、具体的に説明して参りましたが、これからは、実際に調停離婚が成立した後の手続についてご説明いたします。
既にご説明しましたとおり、離婚調停のメインはまさに裁判所内で行われる話し合いであり、調停が成立すると、申立人(調停を申し立てた人)であろうと相手方(調停を申し立てられた人)であろうと、とりあえず精神的なストレスから開放されますので、ほっとすることになります。
しかし、手続自体は終了しましたが、離婚調停には後始末があります。

1 離婚の届出
例えば、調停離婚は調停成立の日に効力が発生しますので、協議離婚のように市町村役場に離婚届を提出する必要がないようにも思えますが、実際には離婚の事実を戸籍に反映させる必要がありますので、やはり役場に離婚届を提出しなければなりません。
(1) 届出義務者
まず誰が離婚届を提出するかですが、原則は申立人、つまり離婚を求めて調停を申し立てた人です。
ただし、調停条項で「相手方の申し出により本日調停離婚する」との文言が付け加わった場合は、相手方に離婚届出を行う義務が生じることになります。
なお、相手方の申し出により調停離婚するとは、離婚を申し立てられた側からすると矛盾するようですが、案外調停をやっていると見られるものです。
つまり、離婚を求められたという体裁を好ましくないと思う当事者がいるということですね。
離婚調停は身分関係のややこしい部分に立ち行って話合うことになりますので、相手方の心情に配慮して文言で工夫する時によく用いられるわけです。
なお、届出義務がある人が後に述べます届出期間内(調停成立の日から10日以内)に離婚の届出をしなかった場合は、もう片方の当事者からも離婚の届出をすることができるようになります。

(2) 届出場所
届出場所ですが、夫婦の本籍地か届出人の住民票上の住所にある市町村役場になります。

(3) 必要書類
必要書類ですが、① 調停調書謄本 ② 離婚届書 ③ 夫婦の戸籍謄本 の3つです。

① 調停調書謄本このうち、調停調書謄本は、成立した調停の内容が記載された裁判所作成の文書ですが、作成には通常2~3日程度の時間を要するため、確実に調書を受け取れるように、調停が成立した後に、印紙を貼付の上で調停調書の交付申請書を予め提出しておき、できあがり次第連絡をもらって裁判所に直接取りにいくか、郵便で配送してもらうなどの方法をとることになります。
なお、調停調書謄本にも色々なバージョンがあります。
具体的には、単純な離婚だけの調停であっても、一般的にはフルバージョンの調停調書と戸籍課提出用の謄本の2部が渡されることになります。
これは、例えばフルバージョンの調停調書だけ渡されたとすると、離婚届けの提出の際に調書を渡してしまうと、手元に何も残らなくなってしまい、不都合だからですね。
その代わり、戸籍課提出用の調停調書の謄本には、戸籍記載事項以外が省略された省略謄本が渡されます。
その他の文言(例えば養育費の支払い等)は、離婚そのものの届出に関しては不要だからですね。
その他にも、例えば年金分割の按分割合を定めた場合は、年金分割手続用の省略謄本が渡されることになります。

② 離婚届出書
次に、離婚届出書ですが、調停離婚専用の届出書が別途あるわけではありません。一般に役場で配布されている離婚届出書に記入して提出することになります。
なお、この際相手方の署名捺印や証人2人の記載は不要です。調停離婚はすでに成立しており、離婚届出書の提出はいわば報告にすぎないからです。

③ 夫婦の戸籍謄本
さらに夫婦の戸籍謄本ですが、夫婦の本籍地以外の市区町村役場で届出をする場合に限り、夫婦の戸籍謄本が必要となります。
逆に言えば、夫婦の本籍地の役場に届出をする場合は不要です。

(4) 届出期間
最後に届出期間ですが、調停成立の日から10日以内です。
これが案外タイトで、調停調書謄本の完成が数日遅れるなどしてしまうと、それこそ1週間程度の時間的猶予しかありません。
そのため、ある程度離婚調停成立の見通しが立っている場合は、予め戸籍謄本の取り寄せをしておくなど、それ相応の準備をしておいた方が良いでしょう。
以上が離婚の届出の手続ですが、おわかり頂けましたでしょうか?
事後処理については細かい手続が絡むので、意外に落とし穴になる場合があります。
弁護士に相談するなどして、慎重に対応することが重要です。