これまで、「離婚と年金分割①」では、年金分割の基礎知識としての年金制度の簡単な説明、「離婚と年金分割②」では「3号分割」の説明、「離婚と年金分割③」では「合意分割」について説明して参りました。
わかりにくい制度を簡潔に説明しなければならなかったので、多少言葉足らずな部分があるかもしれませんが、詳しくは弁護士に相談して頂ければと思います。
さて、今回は、具体的な年金分割制度の手続について説明します。
なぜここで手続の説明?と思うかも知れませんが、実は年金分割は色々な資料を用意しなければならなかったり、資料が足りないことが理由で、改めて役所で書類を取り寄せるなどして、年金事務所での待ち時間が無駄になったり、とにかくいらいらすることがあるからです。
1 年金の按分割合の合意(公正証書の作成の仕方)
説明の順番ですが、今回は、現実には多数派を占めている「合意分割」で必須の手続である「年金の按(あん)分割合(分割割合)」の合意の仕方についてまずは説明いたします。
年金分割の最初のハードルということになりますね。まず、年金の按分割合(分割割合)について定める方法としては、離婚した夫婦が合意の上で割合を定める方法が原則です(合意できない場合は、裁判所を通して按分割合を定めることになります)。
そして、按分割合の合意については、公正証書にするか、合意を記した書面について公証人から認証を受けておくことが必要です。
さて、公正証書の作成や公証人からの認証は公証役場で行うことになりますが、そもそも公証役場とは、公正証書の作成、私文書の認証、確定日付の付与等を行う官公庁のことで、大きな町なら大体あります。
公証役場には、「公証人」という方がおり、その方が公正証書を作成したり、書面を認証したりするわけです。
なお、「公証人」には、例えば検察官や裁判官を退官された方など、法曹資格をもっている方が就任することがほとんどです。
そして、年金の按分割合について合意した夫婦は、公証役場に2人で行って公証人の前でその合意について記した公正証書を作成して貰うか、予め合意について記した文書に認証印を押して貰うわけですね。
もちろん、公証には費用が掛かりますが、びっくりするような金額ではありません。詳しくは公証役場に問い合わせてください(おおよそ公正証書だと1万円強くらいかと思います)。
2 年金分割のための情報通知書
さて、公証役場で按分割合の合意について公正証書を作って貰うか認証して貰うためには、もう一つ重要な文書を予め取り寄せておく必要があります。
これは、「年金分割のための情報通知書」です。
この「年金分割のための情報通知書」とは、要するに、今後年金を分割をするにあたっての基本的な情報が記録されている書類であり、制度として、年金分割にあたって按分割合の合意を書面化するためには、この「年金分割のための情報通知書」を添付しなければなりません。
この書面は、社会保険事務所でもとることができますし、郵送でも取り寄せが可能ですが、いずれにしましても、請求には「年金分割のための情報提供請求書」という決まった書式に必要事項を記載し、これに年金手帳、戸籍謄本(抄本)、事実婚期間がある場合は住民票等をあわせて提出すれば、発行されます。
ちなみに、私は年金分割のための情報通知書を依頼者にとってもらうときは、極力社会保険事務所で直接の手続をしてもらうことにしています。といいますのも、年金分割のための情報提供請求書がややこしくて、社会保険事務所の職員とあれこれやり取りしながら書いた方が結果効率がいいからです。
こうしてようやくとれた年金分割のための情報通知書ですが、手間がかかるので、離婚の話し合いをする前に予め取り寄せておいたほうがいいでしょう。
(次回に続く)