千歳・大石法律事務所は横浜・関内の法律事務所です。

横浜・関内 千歳・大石法律事務所


今週はピンクづくし。
カラーと
カンパニュラです。

先週のウェルカムフラワーがまだまだ元気なので後ろに飾ってみました!


(これからお話しするストーリーは手続を説明するためのフィクションであり、「ミナト木材加工株式会社」も特定の会社を想定したものではありません)
イントロダクション
A氏の場合①

A氏の場合②

A氏の場合③

A氏の場合④

A氏の場合⑤


6 「破産」という言葉の持つ意味

木材事業の話が済んだところで、弁護士が口を開いた。

「さて、先週の電話で御社の資金繰りが悪化している可能性についてはわかりましたが、もう少し具体的にどうして資金繰りがおかしくなったのか、お話しをお聞かせ願えませんか?」

「もともと木材加工業界は長く続いた建設不況と安い海外製品に押されて景気が良くない業界だったのですが、当社はそれでも何とかやりくりしてここまでやってきました。それもいくつか先代から続く大口のお客さんがいたからでもあるのですが、先週、突然そのお客さんの一つから代金を支払わないとの通知が来てしまいまして。。」

A氏は言葉を一つ一つ選びながら説明した。

「代金を支払わないとは、大事ですね。相手方の言い分は何ですか?例えば納品の時期が遅れたとか、製品に欠陥があるとか、契約の解除をされたとか、そういったことですか?」

「ええ、そうなんです。当社の納品した住宅資材にシロアリが混入していたということで、客先が私どもに対して損害賠償を請求してきまして、それと代金とを相殺すると主張してきたんです」
A氏は声を絞り出すようにして言った。

「なるほど、よくある話しと言っては何ですが、あなたにはその点に心当たりはあるのですか?」

弁護士は顎に手を添えながら身を乗り出してきた。

「身に覚えはないのですが、先生もおわかりのとおり当社は木材という「生物」を扱っておりますので、虫害やカビといった問題が生じることは避けられません。ただこういった問題は大抵はそれが生じた時点で客先からクレームが来るものですし、こうした場合は当社が欠陥のない製品と交換することで大体解決していたのです。それが、、」
弁解めいた話をすることに躊躇を覚えたが、弁護士の真剣な眼差しを信じて全て洗いざらい話してしまおうとA氏は思った。

「突然、客先から損害賠償だと言われたのですね。製品については検収は当然終わっているわけでしょう?ところで、その客先は御社の資金繰りがぎりぎりだったということはご存じでしたか?」

「検収は終わっており、書面をいただいています。だから安心していたのですが、、こんなことになってしまって、、。資金繰りについてははっきりとは説明していませんが、狭い業界なので、、。以前前払いなども求めたことがあるので、あまりうまくいっていないのかな、位の認識はあったと思います」

「客先の意向はわかりませんがね。結果としてですが、先方としても資金繰りがうまくいっていないリスクの高い会社との取引を停止できたわけですね。
それはともかくとして、先方から送られてきた通知を見せて頂けますか?」

A氏は鞄からホチキス止めされた書面を探し出し、弁護士に渡した。

「なるほどね。住宅の施主から損害賠償の訴訟が起こされたと。この裁判は続いているわけですか。となると、御社に対する最終的な損害賠償額がはっきりするのはもう少し後になりそうですね。うーん。」
弁護士は少し考え込むような表情を見せた。「この客先に対する売掛金はおおよそ幾らくらいなんですか?」

「1月15日に1000万円を受け取る予定でした。それがないと、月末に買掛金を支払うことができません。」

A氏は覚悟を決めて資金繰りが月末にはショートする可能性が高いことを説明した。

「客先とは話をしましたよね。例えば一部は払うとか、取引は今後も継続すると言った話はなかったんですよね」
「何度も話をしました。大きな会社なので、担当者レベルでは埒があかなくて、、。」
A氏は弁護士の意に添えない回答をしたのではないかと思い、不安に思った。

「それでいいんです。つまり、上司に掛け合っている余裕はないことははっきりしていますね」
弁護士は意外にも満足そうな顔を見せた。

「そうです。月末には間に合いません。」ここまで話してA氏は、弁護士はミナト木材加工株式会社の手続の方向性について聞いているんだなということが分かった。

「つまり先生は、当社について破産をすべきかどうかを考えていらっしゃるんですか?」

「一つの可能性としてはね。ただそれよりも大事なのは、前提問題で、月末の支払を乗り切れるかということです。損害賠償請求をしている客先との間で和解の可能性はあるか。和解の余地があるとして交渉にはどれくらい時間が掛かると予想されるか。月末の支払について賃金などの最優先の債務を除いた残額はどれくらいあるか。待ってもらえる債権者はいるか。といった事情をお伺いしながら、まず当面の資金繰りのピンチを乗り切れるかを考える。その上で、将来に向けての再生可能性についても考えます。例えば翌月以降の資金繰りなどね。
「こうした話をお伺いして、仮に会社に再生の余地があると考えたとしたら、次に社長ご自身のお人柄とのマッチングを考えたりします。つまり茨の道を乗り切れるだけのやる気と熱意があるか、といったところですね。」
「ただ今までのお話しをお伺いする限りですが、大口の客先から取引停止と共に代金支払いを止められてしまう。そして話し合いの成果が上がっておらず、最終的な解決には時間が掛かりそうだ。という事実を総合すると、会社の再生を進めるだけの時間的な余裕がないようにも感じます。国税の調査も入っているということも勘案すると、一つの可能性として破産も一つの選択肢に上がってくることは否定できませんね。」

破産という言葉が弁護士の口から出てきた瞬間、A氏の背筋は凍り付いた。
「やはり破産ですか、私はどうなってしまうんでしょう。」

「まずあなたが破産を恐れるのは当然のことです。愉快な言葉ではないことは確かです。
ただ。」

「ただ?」

「あなたの恐れは「お化け」を恐れることと似ています。つまり「得体が知れない」から怖いというものですね。あなたには情報が少なすぎるのです。情報が少なすぎるから、あなたは自分の将来がどうなるかわからず、不安になるのですよ。」

「でも、破産って戸籍にのるんですよね」

「なるほど、戸籍に乗ったらやっぱり嫌だよね。でもほらこれだって間違った情報ですよ。そもそも今話に上っているのは会社の破産であって、あなたの破産ではありません。私はあなたが会社の連帯保証人になっているとか、多重債務を負っているといった事情は伺っておりませんので、あなた自身の破産はまだ検討段階にはありません。それにそもそもあなたが破産したからといって、戸籍謄本に載ると言ったことはありません。つまりこんな感じで間違った情報や分からない情報が多いこと、そのことが人々の不安を駆り立てるわけですね。」
(次回に続く)


今週のウェルカムフラワーです。

トルコキキョウ
カラー
リョウブ

濃いピンクのカラーがとてもきれいです。


今週のウェルカムフラワーはとても渋いです…!!

キャラメル色のピンポンマム、
トルコキキョウ、
クレマチス、
オンシジュウム。


すごくいい色のオンシジュウムです。



アンセリウム
ニゲラ
トルコキキョウ
の組み合わせです。

ニゲラは別名クロタネソウと呼ばれるそうです。
白と青と緑が色鮮やかで、
すっかり初夏の雰囲気です。