2013年は、「周知」をテーマに、ホームページを立ち上げるなど様々な試みをいたしましたが、幸いにも多くの依頼者の皆様からご支援をいただき、無事1年間を過ごすことができました。
また、弁護士としての責務であるとの認識で微力ながら関わっておりました刑事事件で、無罪判決を得るなど、仕事の内容面でも実り多き1年でありました。
本コラムを通じまして皆様にお礼を申し上げます。
2014年は、皆様の心の解決に対し法律家としてお役に立てるよう、これまで以上に努力して参りますので、これからも変わらぬご支援をお願い申し上げます。
千歳法律事務所
弁護士 千歳 博信
千歳法律事務所の代表の千歳です。
さて、これまで調停離婚後の手続について3回に渡って説明して参りましたが、今回は最後のテーマ「子の氏と戸籍」です。
1 離婚と子供の戸籍との関係
まず、すでにお話ししてきましたとおり、夫婦(父母)が離婚すると、当事者の一方の戸籍は婚姻前の戸籍に移るか(復籍)、新戸籍を編製してそこに移ることになりますので、戸籍がばらばらになります。
ところが、父母が仮に離婚したとしても、子供の戸籍は影響を受けません。
つまり、子供の戸籍は離婚に関わらず父母の婚姻中の戸籍にとどまることになります。
そして子供の戸籍が従前の戸籍にとどまるということは、氏(つまり名字)も変わらないということになります。
例えば、AさんとBさんの間には子供Cがいて、AさんとBさんは協議の上離婚、親権者はBさんに指定されたとします。
この場合、Bさんの婚姻前の氏(旧姓)が例えば「鈴木」であり、Aさんとの婚姻によって「山田」に氏がかわったとすると、今回の離婚により、Bさんはもともとの戸籍に戻るか、新たに新戸籍が編製されて、そこに戸籍が移ることになります。
そして、Bさんの氏は「山田」から「鈴木」に変わります。
ところが、子供Cの戸籍は離婚でも移動がありませんので、Aさんの戸籍にとどまったままです。つまり、子供Cの氏は「山田」のままとなります。
このように、夫婦が離婚をすると、子供の戸籍と親権者の戸籍が異なり、氏も異なってくる可能性が出てくるのです。
以上の問題は、親権者が戸籍法77条の2の届出をして、婚姻中の氏(先の例でいえば「山田」)を続称した場合でも同じです。
2 子の氏の変更許可の申立
ではどうすれば、別の戸籍に移った親権者の戸籍に子供を入籍させることができるのでしょうか。
これは、家庭裁判所に「子の氏の変更許可の申立」を行い、裁判所の許可を得た上で、戸籍課に届出を行う、というのが答えです。
そこで「子の氏の変更許可の申立」の方法ですが、
① 子の住所地を担当している(「管轄」といいます)家庭裁判所に対して、
② 氏の変更を求める子供自身が「申立人」として、
申立を行う方法で行います。
この点、子供が15歳未満の場合、子供が単独で申立を行うことはできませんので、親権者(法定代理人)が子供の代理人として手続を行うことになります。
さて、「子の氏の変更許可の申立」の書式は、家庭裁判所に定型書式が備え置かれておりますので、そこに必要な事項を記入して申立することになるのですが、添付書類としては、
・父の戸籍謄本と母の戸籍謄本
になります。
戸籍謄本はそれぞれ1通で申立自体はできるのですが、役場に入籍届を出す際に別途入籍届を出す市町村と異なる本籍地の戸籍謄本が必要となりますので、念のため戸籍謄本は予め2通取っていた方がよいでしょう。
また申立費用ですが、収入印紙は子供1人につき800円、郵便切手は個々の裁判所によっても異なりますが、おおよそ80円切手3枚程度というのが相場です。
このように、「子の氏の変更許可の申立」は裁判所の手続であり、一見面倒くさそうですが、原則として許可にあたって細かい審査をするわけではありませんので、そのほとんどで問題なく許可はでます。
ですので、ほとんど心配はいらないのですが、もしも不安を感じているのであれば、弁護士に相談して手続を代わってやってもらってもいいでしょう。
3 許可が出た後の手続
さて、家庭裁判所より子の氏の変更の許可がでましたら、その「許可審判書謄本」を添付して、子供の本籍地の市町村役場かあるいは親権者の住所地の市町村役場で入籍届を出すことになります。
この点すでにお話ししたとおり、入籍届けを出す市町村役場が父又は母の本籍地と異なる場合は、その本籍地が異なっている戸籍謄本を改めて添付する必要がありますので、予め戸籍謄本は2通取っておいたほうが便利です。
このように、子の氏の変更は、手続自体は簡単なのですが、その制度の趣旨などを考えると結構複雑ですよね。
できるだけ丁寧にわかりやすく説明したつもりですが、一つ重要なことは、離婚をした際に、子供の戸籍や氏に関して、注意しなければならないことがあったな、といった程度の「気づき」です。
つまりこの「気づき」さえできていれば、後は制度を良く知っている弁護士や裁判所、市町村役場の戸籍担当者などに、その疑問をぶつけ、子の氏の変更について具体的な手続きを教えてもらうことができます。
現在法教育が叫ばれておりますが、法教育とは、細かい法律の知識や解釈を知って貰うということよりも、一般の方にいかに法的な問題及びそれに関連する問題に関する「気づき」のきっかけを身につけて貰うか、といったことが重要であると感じます。
皆さんも、この「気づき」を意識して本コラムを読んで頂ければ幸いです。
前回までは、離婚の届出の仕方や、離婚後の氏について説明して参りましたが、今回は、離婚後の戸籍について説明いたします。
まず、既にお話ししたとおり、結婚して氏を改めた者は、離婚により旧姓、つまり婚姻前の氏に戻りますが、引き続き婚姻中の氏を称する場合は、離婚の日から3か月以内に離婚の際に称していた氏を称する届出をすることで従前の氏を引き続き称することができます。
① 離婚によって婚姻前の氏に戻った場合
この点、離婚によって婚姻前の氏に戻った場合は、婚姻前の戸籍(例えば実家の戸籍)に戻る(これを「復籍」といいます)のが原則ですが、婚姻前の戸籍がすでに除籍になっている場合は、新たに新戸籍が編製されることになります。
また、離婚によって婚姻前の氏に戻った人で、別の本籍地に新たな戸籍を作りたい場合は、その者が離婚届の届出義務者であれば、離婚届書にその旨を記載すれば、希望する本籍地に新戸籍を編製することができます。
ここで、「離婚届の届出義務者」とは、離婚調停であれば、通常は申立人(つまり調停を申し立てた人、当初離婚を求めた人)ですが、調停の条項に「申立人と相手方は、相手方の申出により、離婚する」という文言が含まれている場合は、相手方つまり調停を申し立てられた人が離婚届出義務者になります。
この離婚届けの届出義務者を誰にするかは、結構重要ですので、調停が成立するまでにしっかりと方針を決めておきましょう。
② 婚氏続称の届出をした場合
他方、従前の氏を引き続き名乗ることを希望し、届出をした場合(これを婚氏続称の届出といいます)は、必ず新戸籍が編製されることになります。
戸籍がどうなるかは、離婚の際によく依頼者の方から質問されることが多い事項ですので、まとめてみました。
次回は子供の戸籍についてお話しいたします。
再来週より、年末年始のお休みをいただきます。
2013年の業務終了は12月27日(金)、
2014年の業務開始は1月6日(月)となります。
その間は、ご連絡いただいても返事を返すことができませんので、何卒ご了承下さい。
先週撮影した日本大通りの銀杏並木です。
春のチューリップと秋の銀杏、関内が最も賑わう季節です。
事務所までお越しの際は是非日本大通りまで足を伸ばしてみてくださいね。