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今回は、年金分割についてのお話です。
さて、これから様々な理由で離婚を考えておられる方であれば一度は「年金分割」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
そして、中には年金分割があるから老後の生活は安心だ、ということで離婚に踏み切る方もいらっしゃるかも知れません。
ただ、実際年金分割の制度について詳しくご存じの方はどれくらいおられるでしょうか?
例えば年金分割をすれば、夫の年金の半分を受け取ることができる、と考えている方はいないでしょうか?
これは大きな誤解であり、後で後悔しないためにも、年金分割制度について少なくとも概要は理解しておかなければなりません。
そして、制度の概要を理解することで、より具体的に離婚の意味について理解することができるのです。
1 年金の種類
まず、年金分割を理解するためには、年金の種類について知っておく必要があります。
① 老齢基礎年金
老齢基礎年金とは、国民年金に原則として25年以上加入した人が65歳から受ける、全国民に共通した年金のことをいいます(1階部分)。
原則として学生さんでも、自営業者でも、またサラリーマンや専業主婦も皆等しく加入が義務づけられている年金です。
② 老齢厚生年金(共済年金)
他方、老齢厚生年金とは、厚生年金に加入していた人が、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしたときに、65歳から老齢基礎年金に上乗せして受ける年金のことをいいます(2階部分)。
例えば会社に勤めている人が会社が半分負担する形で加入している年金の多くが厚生年金です。
公務員や私立学校の教職員が加入する共済年金もこれに含まれます。
③ その他の年金等
その他、確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金などがありますが、これは要するに基礎年金や厚生年金にさらに上積みされる部分の年金(3階部分)のことです。


2 年金分割の対象となる年金は厚生年金
ここで、重要なのは、年金分割の対象となるのは、老齢厚生年金であり老齢基礎年金ではないということです(なお、正確には分割の対象となるのは「厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)」ですが、ただでさえ分かりにくい年金分割制度がさらにわかりにくくなりますので、便宜上「年金を分割する」という表現をとることといたします)。
またいわゆる企業年金(確定給付企業年金、確定拠出年金等)も年金分割の対象となりません。
つまり、老後の年金支給額が例えば合計月額20万円であっても、そこには厚生年金のほか基礎年金やその他の企業年金が含まれており、その半額の10万円が離婚後に当然受け取れるわけではないのです。
それから大事なのは、年金分割の対象となるのは夫婦の婚姻期間中の部分だけです。
ですから、仮に基礎年金や他の年金を差し引いて純粋に厚生年金の支給額を計算したとしても、厚生年金に加入すると同時に結婚したというような場合でない限り、純粋に半分受け取れるということにはならないわけです。
このように、年金分割を理解するにあたっては、①分割されるのは厚生年金だけであること、基礎年金やその他の企業年金は含まれないこと、②分割の対象となるのは婚姻期間中の部分に限られること、この2点は最低でも頭に入れておく必要があります。
(次回に続く)