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2 合意分割制度
前回の3号分割制度に引き続き、「合意分割制度」についてご説明いたします。
合意分割制度とは、夫婦が平成19年4月1日以後に離婚した場合に、当事者双方の合意または裁判手続により按分割合を定めることを前提として、当事者の一方からの請求により、婚姻期間中の年金(年金記録)を当事者間で分割することができる制度のことをいいます。
そして合意分割は当事者双方が請求可能であり、この点が第3号被保険者からの請求に限られている3号分割と異なります。
少しわかりにくいので具体的に説明いたします。
例えば、平成10年4月1日に結婚した夫婦が、平成25年5月31日に離婚したとしましょう。
そして、夫が給与取りで妻が被扶養者、つまり第3号被保険者であったとします。
そして、夫は結婚後離婚まで一貫して会社に勤めていた。つまり、婚姻期間中は厚生年金に加入していたとしましょう。
この場合、妻は第3号被保険者であるわけですから、年金分割も3号分割、つまり、按分割合は当然に2分の1になる、と考えがちです。
ところが、それは大きな誤解です。
もう一度思い出して下さい。3号分割の適用があるのは、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間の年金記録ですよね。つまり、対象となるのは平成20年4月1日以降の年金記録(しかも第3号被保険者期間の年金記録)であって、それ以前は3号分割の対象ではないのです。
そして3号分割の対象ではない、ということは、合意分割の制度を利用しなければならないということなのです。
つまり、今回の具体例に則して言いますと、離婚の際、少なくとも平成20年4月1日以前の年金記録については、当事者が合意するか調停や審判などで按分割合を定めなければならないわけです。
他方、平成20年4月1日以降の年金記録については、3号分割制度が適用されることになります。
よって、今回の例では、結局、年金分割については合意分割の分(平成20年4月1日以前の年金記録)と3号分割の分(平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間の年金記録)が、併存することになるのです。
ということは、妻が離婚後年金分割の請求をする場合、合意分割と3号分割の双方を請求しなければならないことになり、大変面倒ですよね。
これにはちゃんと手当てがあって、合意分割の請求が行われた場合、婚姻期間中に3号分割の対象となる期間が含まれるときは、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます
つまり、一部3号分割の期間があっても、合意分割の請求をしておきさえすればいいわけですね。
以上をまとめると、3号分割以外の分割が含まれる場合は、合意分割制度を用いて分割することになるが、合意分割制度と3号分割制度が併存する場合は、合意分割の請求をすれば、3号分割の請求があったものとみなされる、ということになります。

なお、ここまで読んできた皆さんの中には、「それでは3号分割制度が実際に使われる場面は少ないのではないか」と思われた方も多いかも知れませんね。
それ正解です。実は、年金分割制度自体、平成19年4月1日以降の離婚に対して適用されることから分かるように、最近の制度なのです。
そのうち、3号分割制度は本来離婚に伴う年金分割の原則的な形態になるはずなのですが、その適用自体が平成20年4月1日以降になってしまうために、平成20年4月1日以前から結婚をされていた相対的に多くの夫婦についてはどうしても合意分割を用いざるを得ないわけですね。
ただ、これから時代が流れ、平成20年4月1日以降に結婚された夫婦が大多数になったならば、3号分割が多数派になるかも知れません。
つまりそういうことなのです。
それから、もう一度繰り返しますが、年金分割の制度を利用することができるのは、平成19年4月1日以降に離婚した場合(合意分割の場合)であり、かつ原則として離婚の日の翌日から2年を経過しない期間内に年金分割の請求をしないといけません。
按分割合を定めただけでは年金分割を請求したことにはなりませんので、くれぐれも請求を忘れないようにしてください。