千歳・大石法律事務所は横浜・関内の法律事務所です。

横浜・関内 千歳・大石法律事務所

千歳法律事務所代表の千歳です。
前回のコラムでは、第2回調停期日以降の手続、とりわけ調停の成立に向けての「決断」の重要性についてお話ししました。
今回は、調停で合意が成立した場合の手続についてお話しいたします。

1 調停での合意内容
すでにお話ししましたとおり、離婚調停では、離婚をするかしないか、という本体の話のほか、未成年の子供がいる場合は、親権者の指定、養育費の取り決め、面会交流の日程調整、夫婦共同の財産がある場合は財産分与、何かしらの慰謝料原因がある場合は慰謝料の額、年金分割の按分割合、などについて話し合われます。
その結果、申立人(調停を申し立てた人)と相手方(調停を申し立てられた人)との間で合意があった場合は、調停が成立となります。
なお、合意すべき内容は今お話ししたとおり多岐に上りますが、全ての問題について合意しなければ、調停が成立しない、ということではありません。
実際には、離婚そのものについては合意したが、年金分割の按分割合についてどうしても合意ができなかった、という場合でも、按分割合については審判(話し合いではなく、裁判官が職権で証拠調べを行うなどして決定する手続)で決定してもらう前提で、とりあえず離婚について調停を成立させる、という場合もあります。
ただ、年金分割の按分割合を残して他の部分で調停を成立させるのは、それなりの腹づもりがあってのことです。
つまり、年金分割の按分割合については、余程の事情がない限り0.5(つまり50%)の決定が出るので、あえて調停で無理して合意しなくても審判で想定通りの決定がなされるであろうとの打算があるんですね。
これは逆に言えば、ある程度結論が見通せない問題については、問題を先送りせず、やはり、調停の中で合意を目指していくべきだということになります。

2 合意が成立したら
調停で合意が成立した、または合意できそうだ、という段階になりますと、実際に調停調書にどのような内容の文言を載せるかといった具体的な話になります。

(1) 調停調書とは
ここで「調停調書」という言葉が出てきたので、簡単に説明します。
まず、家事調停において、当事者間で合意が成立し、調停機関がその合意を相当と認めてこれを調停調書に記載したときは、合意に相当する審判をすべき事項を除いて、調停が成立したものとし、その記載は、訴訟事項については確定判決と同一の効力を有し、また、乙類審判事項については確定判決と同一の効力を有するとされております(家事審判法21条1項、2項)。
これを平たく言うと、調停手続は、当事者間で合意が成立し、これを調停調書に記載されることで初めて「成立」するということを意味します。
また、調停調書の記載事項の中には、確定判決と同一の効力、つまり、裁判で判決が出た場合と同じ効力が発生する、ということも意味します。
つまり調停調書は極めて重要な文書であり、その内容については慎重な吟味が必要なのです。
ただ、実際の離婚調停では、予め定型的な調停文言が用意されていて、大多数の調停では、その文言にしたがって調停調書が作成されます。
例えば、
「申立人と相手方は、本日、調停離婚する。」や、財産分与に伴う解決金を支払う旨の条項などは、ほぼ定型化された文言を外れることはありません。
それには理由があって、調停離婚を確実に戸籍に反映するためには、誰が見ても調停離婚が成立したことが明らかな文言にしなければなりませんし、金銭の支払いが絡む条項については、強制執行力が発生するので、執行の段階で誤解が生じないように、間違いがない文言を掲載する必要があるからです。
ここは案外重要なポイントであり、代理人弁護士も慎重な判断が求められるところです。

(2) 調停の成立
さて、調停調書の内容がある程度固まりますと、通常一般は、調停委員の先生が審判官(裁判官)と相談するために一旦席を外します。
それは、調停委員、審判官によって構成される調停委員会で合意内容を検討する必要があるからです。
その結果問題がない、ということになれば、審判官、調停委員、書記官が調停室に行き、調停委員がそれぞれの当事者を調停室に呼び出します(調停成立の段階で相手方当事者と同席することができない場合は、時間をずらすことも、例外ですがあります)。
その後、審判官が当事者双方の面前で調停条項を読み上げて、双方に対しその内容でよいか確認します。
これに対して当事者がその内容でよい、と答えた段階で一般的には調停が成立することになります。
厳密に言えば、その後書記官によって調停条項を「調停調書」という形で書面にした段階で調停が成立したことになるのですが、書記官は調停調書を急いで作成してくれますので、時間的な離隔は僅かであり、現実にはそれで問題になることはまずありません。
なお調停調書の作成には印紙が必要です。詳しくは調停成立後、書記官が説明してくれますが、一応頭に入れておくとよいでしょう。
次回は調停成立後の手続について説明いたします。


千歳法律事務所の代表弁護士の千歳です。
さて、これまで6回に分けて、「離婚調停の上手な対処法」と称して特に離婚調停(夫婦関係調整調停(離婚))を中心に、具体的な手続について説明して参りました。
今回は、第2回調停期日以降の具体的な手続の内容とその対処法について説明いたします。なお、これまでもご説明しているとおり、調停は主として「家事審判法」という法律によって手続きが定められていますが、具体的な手続の進め方は裁判所やそれぞれの調停委員会に委ねられております。
そのため、私がこれまで説明してきた手続の内容と実際に行われている手続とが若干異なってくる場合もあり得ます。
むしろ、家事審判法の大枠の中でそれぞれが裁量を発揮して紛争解決に努力することこそが家事調停の使命であるとすれば、このように、調停手続毎に微妙な違いが生じるというのは、調停らしいともいえるのですが、みなさんも、そのような調停の本質をご理解頂いた上で、このコラムをご覧頂ければ幸いです。


1 調停期日初日と2回目以降の調停期日との違い
本題に移ります。
まず、調停期日の初日と2回目以降の調停期日との違いですが、家事審判官と調停委員によって構成される調停委員会が中心となって、当事者双方から交互に話を聞く、という基本的なスタイルは、どちらも変わりがありません。
変わってくる点と言えば、話し合いの内容そのものです。
つまり、初日は主として双方の言い分を調停委員会が聞くことが中心でしたが、2回目以降は、述べられた広範な事実関係から争点を抽出し、双方が合意できるラインを慎重に、時には大胆に探っていくこと、つまり合意の形成に向けて具体的な話し合いを行っていくことが中心となります。

(1) 初回の調停期日
もう少しわかりやすく説明しますと、調停初日でももちろん何が問題となっているのか、について争点を絞る努力はしますが、それこそ調停委員会としても当事者がどんな態度で調停に参加しているのかわかりませんし、双方が話合いのテーブルにつくためには、当事者に言いたいことを言って貰ってガス抜きをするという必要もありますから、まずは当事者の話をじっくり聞くという展開になることが多いです。
そして、当事者から詳しく事情を聞くことで、当事者の個性、例えば感情的なタイプであるか、冷静な話し合いに応じることができるタイプかといったところを把握し、それぞれの個性を踏まえた話し合いの方法を探っていくわけですね。
要するにまずは様子見ということになるわけです。

(2) 2回目以降の調停期日
他方、2回目以降の調停は、初回の調停で双方から述べられた主張を踏まえて、争点を絞り、双方の合意を探っていくことになりますので、調停委員の先生方も、折り合いのよい妥協点に向けて、時には説得し、時には当事者に自ら解決案を提示させるなどしていくことになります。
つまり、具体的な話し合いが行われるわけです。
代理人弁護士である私たちも、ただ漫然と調停に臨んでいたのでは調停委員の考えに付いていくことができませんので、事前に十分な準備をし、調停委員や相手方の対応を予測し、予め合意できるポイントをイメージしながら調停に参加することになります。
また、私の経験では、調停委員の先生の中には、あえていらいらした態度を見せたり、突き放したり、時には議論を持ちかけるなど、当事者(時には代理人)との距離感を図りつつ、巧みに話し合いを主導していく方もおられます。
代理人も調停委員と激しい議論を交わしながらも、頭では冷静に、なぜこの場面で議論をするのか、その必然性を冷静に見極めていたりするわけです。
調停とは、予め手続の大枠が定められた交渉ですが、当事者双方はそれぞれの背景(バックボーン)を抱える大人であり、それなりに面子やプライドがあるわけですから、単に「話せば分かる」というスタンスでは交渉の入り口に立つことすらできません。
そのため、当事者との距離を詰めたり、離したりという微妙な駆け引きが重要になってくる場面が多々あるわけです。
調停委員の先生の中にはそういった大人の駆け引きを実にうまく体現している方がおられますが、代理人弁護士としてもそういう調停委員にあたったときは、色々と勉強になります。

2 決断の重要性
さて、2回目の調停ではこのように、合意点に向けて具体的な話合いがなされることになりますが、それは逆に言えば、それぞれの当事者にとって受け入れられる合意かどうかの決断をシビアに迫られるということを意味します。
例えば、離婚調停で、あなたが離婚を求められる相手方として、以下のような事実関係があったとします。
「自分としては長年連れ添った相手方から離婚を切り出され困惑しているところで、突然の調停の申立て。仕事を休んで家庭裁判所に出頭し、色々と事情を説明したけれども、調停委員の話では、相手方の離婚の意思は固く、元の生活に戻る意思はなさそうである。
自分は夫婦関係が円満だったときのよい記憶を思い出し、何故その頃に戻らないんだと泣き叫びたい気持ち。でも調停委員も自分の話を親身に聞いてくれた上で、自分の将来を考えたら離婚も一つの選択肢ではないか、と提案してきている。」
このような場合において、離婚を決断し、あとは離婚条件を詰めていく、という決断をするか、離婚を拒否し、争う方向にもっていくかは、あなたの決断にかかっています。
人生を左右する重大な決定を、当事者として合理的に損得を見極めつつ、感情的な部分を抑えつつ決断しなければなりません。
しんどいですが、このような決断が必要とされるのが調停です。
もちろん、こうした決断を行うにはそれなりの時間がかかるものですから、意思表明については次回以降に持ち越されることが多いですし、そもそも期限を定めずに、「これから少しずつ考えていって下さいね」と熟慮期間が与えられるも多いですが、調停とは双方が下りてこなければ合意自体が成立しないわけですから、どの立場であったとしてもこういったシビアな決断が求められる時期があるんだということは、ご理解ください。
代理人弁護士としては、こういった場面で、その決断をすることのメリット、デメリットを説明したり、ここを認める代わりにこの部分は相手に決断を求めよう、といった形で交渉の道筋を提案していくことになるわけですね。
なお、決断は、他にも例えば「親権」、「面会交流の可否、タイミング」、「財産分与の対象財産の特定」等、様々な場面で要求されます。
今回は、初回調停期日と2回目以降の調停期日との間の話し合い内容の違い、そして調停には多かれ少なかれ、当事者が決断をする場面があることについて説明しました。
次回は、調停で合意が成立した場合の手続について説明いたします。


前回までは離婚調停の初日についてお話しましたが、今回は、次回期日までの間の過ごし方についてお話しします。
まず、調停は連日開かれるというわけではなく、おおよそ1か月くらいの間隔で開かれます。
ただ、裁判所の夏期休廷期間や出席者の都合、あるいは調停室の空き状況の関係で、2か月以上調停の間が空いてしまうこともあります。
このように調停の制度上、期日と期日に1か月以上の期間が空いてしまうことが多いので、その間何をすればよいのかが問題になるわけです。
まず、よく質問されるのは、調停期日間に相手方本人と直接話をしてもよいか、というものです。
これについては、ケースバイケースですが、特に代理人弁護士がついている場合は、言い分は代理人の弁護士を通じて伝えるのが通常であり、あるべき姿です。
したがいまして、この場合は当事者本人同士で話し合いをするのは避け、ここはプロの代理人に交渉を委ねるべきでしょう。
例外としては、子どもの面会交流の日程調整のような、当事者同士で直接やり取りする必要があり、かつその弊害が少ない場合です。
ただこの場合も、代理人の弁護士と直接のやり取りの可否及び内容について十分に打合せをしておくことが必要です。

では代理人弁護士がついていない場合は、どうでしょうか。
これもケースバイケースですが、一般的には(特に離婚を求めている立場の方であれば)、直接の話し合いは避けた方がよい場合が多いと思います。
といいますのも、離婚の大多数が協議離婚で終わっている状況下で、あえて離婚調停が申し立てられているのは、当事者同士の話し合いでは有意義な結論を得ることができなかったからであり、話し合いが難しいというのは、調停が起こされた後であっても同じだからです。
もう少し具体的に説明しますと、離婚調停が起こされたということは、要するに、話し合いをしようとしたけれども、相手方が離婚自体に応じてくれない、であるとか、親権で争われている、といったように、当事者間で離婚そのもの、あるいは離婚の条件について妥協ができない部分があったからですよね。
ということは、これを逆に言えば、直接当事者間で話し合いをして意味のある結論を得ようとするならば、折り合いのついていない部分について、どちらかが大きく妥協をしなければなりません。
もちろん、そのような妥協ができないから調停になってしまったわけですので、直接当事者が話し合いをしたとしても、結論が出る可能性は低いと言わざるを得ないわけです。
むしろ、妥協の難しい話を契機として、お互いの感情的な対立が先鋭化し、冷静な話し合い自体ができない場合も考えられます。
要するにリスクが大きいのです。
したがって、あくまでも私の経験を前提とした感想ではありますが、折角調停の中で、中立的な第三者を挟んで冷静な話し合いをすることになったのですから、当事者において対立がある部分については、仲介者のお知恵を拝借する意味でも、当事者同士の直接の話し合いではなく、調停の中で話をするべきであると考えます。
なお、それとは別に、面会交流の日程調整といった事務的な問題については、当事者間で話し合いをしなければならない場面もでてきます。これは代理人がついている場合と同じ理屈です。
このように、調停には制度上、期日の間隔が空いてしまうことが多いので、焦りからか、申立人と相手方が直接メールや話し合いで進展を図ろうとしまいがちですが、調停が起こされた経緯からして、冷静に有意義な話し合いをすることは困難です。
ですので、具体的な話し合いは調停で行いましょう、ということで、どうしても必要な場合であるとか、何か交渉進展の具体的な確証がない場合は、無理して当事者同士で話合うべきではないでしょう。
もしも調停期日の間に交渉の進展を目指すというのであれば、やはり代理人の弁護士を選任した上で、相談しながら慎重に対応していくべきです。


「これではなかなか話合いはできませんね」
このような言葉を調停委員から言われるとしたら、これは調停不成立(不調)のサインです。


1 調停不成立になる場合
これまでお話ししてきましたように、離婚調停は、あくまでも当事者の合意形成を図る手続ですから、例えば相手方が離婚に一切応じる意思がない場合は、初回の調停期日の段階で、話し合いをしても意味がないと判断され、調停が不成立になる場合があります。
わざわざ調停のために家庭裁判所に来て、不成立というのは無駄足のような気がしますが、早い段階で不成立というのは、ちらほら見られるものです。


2 調停前置主義
なお、早期の不成立というのは、「調停前置主義」という制度も一つの原因となっています。
つまり、我が国の法律では、離婚で揉めた場合、いきなり裁判を起こすことはできません。
まず家庭裁判所に調停の申立を行う必要があります(家事審判法18条1項)。
裁判を起こす前に調停を起こさなければならない、という制度のことを「調停前置主義」、「調停先行主義」といいますが、これは要するに離婚問題は家庭の問題ですから、公開の法廷で争う前にまずは話し合いの機会を設けるべきだ、との要請に基づくものです。
ただ、これは逆に言えば、離婚問題で対立が激しく、裁判によらなければ解決ができない場合でも調停を起こさなければならないことを意味しますので、時に形だけ調停を開いてすぐに不成立で終了という場面が生じることになるのです。


3 次回の期日が指定される場合
さて、これまで調停不成立になる場合についてお話ししましたが、それ以外の場合は、もう少し話し合いを続けてみましょうということで、次回の期日が定められることになります。


(1) 次回期日の定め方期日の定め方ですが、申立人、相手方と調停委員との話し合いの中で、次回期日の調整の話が出てきますので、まずは、その場に立ち会っている当事者との間で、次回期日の候補日を決めます。
そして候補日が定まったら、調停委員の先生が、他方当事者が待機している待合室に確認しに行くなどして、都合を確認します。
その後(他方当事者に確認する前のこともあります)、調停室の空きを確認して問題がなければ、次回期日が決定です。


(2) 次回期日に向けての確認
次回期日が定められますと、次は今回の調停の内容の確認と次回の調停期日で話合われることの確認がなされるのが通常です。
その内容はケースバイケースですが、例えば
「次回は親権について話し合いたいので、実際に監護している方は監護状況を説明できるようにしておいてください、監護をしていない方は、具体的な受入態勢を説明できるようにしてください」
であるとか、
「次回は少なくとも婚姻費用については合意したいので、お互いに○年分の源泉徴収票を持ってきて下さい」
といったようなものです。
少しシビアな話になると、
「次回までに離婚を認めてもいいかどうか、考えてきて下さい」
といった宿題が与えられることもあります。
このように調停期日のなかで次回の話し合いの内容や宿題について確認されるのは、調停はおおよそ1か月1回のペースで開かれることが多いので、話し合いが空転してしまうと、調停の成立がそれだけ遅れてしまうことになるからです。
言い換えればその日の調停での話し合いの成果が反映されるとも言えるわけで、調停当事者としては、自分の話がちゃんと聞いてもらえたかどうかのメルクマールにもなるわけです。
逆に自分の話が伝わっていない、与えられた宿題が難しい、できれば交通整理をして欲しい、ということになった場合は、弁護士に代理人になってもらうことを考えなければなりません。


離婚調停が始まり、いよいよ調停委員から事情を聞かれる段階に入りました。
さて、何が聞かれるのでしょうか。
なお、これからお話しすることは、夫婦関係調整調停(離婚)が申し立てられたことを前提としております。
離婚に関わる調停はその他にも例えば婚姻費用分担調停や、年金分割の割合を定める調停、親権を定める調停、慰謝料請求の調停、離婚後の紛争調整の調停など色々ありますが、今回は夫婦の一方(申立人)が、離婚を求める典型的な調停を前提としておりますので、ご了解下さい。
さて、離婚調停では、最初に申立人から事情を聞かれるのが通常です。
聞かれる内容としては多岐にわたりますが、典型的なところとしては、
① それまでの婚姻生活の内容
② 婚姻生活の不満の内容③ 離婚を決意するに至ったきっかけ
④ 現在の生活状況(例えば別居中か同居中か)
⑤ 相手方から婚姻費用は支払われているか、あるいは相手方に婚姻費用を支払っているか
⑥ 今回の調停に至るまでに相手方との間でどのような話がなされたか、これに対する相手方の回答は何だったか
⑦ 今回の離婚に関して相手方は同意しているか
⑧ 離婚後の婚姻生活についてどのように考えているのか
⑨ 子どもがいる場合、親権についてどのように考えているか、具体的な養育の方針は?
あたりになります。
もちろん、始めからこれらの全てが聞かれるとは限りませんし、それこそ事件によって聞かれる内容も変わってくるわけですから、あくまで目安として理解して下さい。
ただ、一つ注意して頂きたいことは、調停はあくまでも話し合いの場であり、闘いの場ではない、ということです。
調停の代理人として立ち会っていますと、中には調停を完全な戦闘の場と割り切り、始めから聞かれることを予想し、詳細な書面を作成してそれをはき出す当事者がいらっしゃいます。
しかし、調停委員も相手方も人の子ですから、このように前掛かりで話をされると、やはり少し引いてしまいます。
交渉の技術には色々なものがありますが、少なくとも調停の場では、私の経験上、がむしゃらに説明してもうまくいきません(もちろん、私自身も代理人として説明に時間をかけたりしますが、それはコントロールされた態度であり、ここで詳しく説明をすることが、交渉の進展に資するとの目算があってのことです)。
あくまでも調停委員は申立人である本人の素の姿を見たいと思っているし、申立人の話し方や話す内容から両当事者の中に存在する問題点をくみ取っているわけですから、そういう空気を感じ取り、適宜微調整をしながら、自分の話を聞いて貰うことが必要なのです。
戦うという気持ちがあることは否定しませんが、あくまでも交渉の場であるという視点は失わないことが大事であると考えます。
さて、調停委員からの事情徴収はおおよそ30分程度ですが、初回についてはもう少し長くなるかも知れません。
待ち時間も含めて長丁場になりますので、精神的に疲弊しないよう、自己コントロールをすることも必要ですね。


調停初日。
一番緊張する瞬間ですが、さて、調停ではどんなことが行われるのでしょうか。
すでに、離婚と年金分割⑤(調停や審判等を利用した分割割合の決定)でも簡単に調停手続を説明しておりますが、今回はもう少し具体的にお話しすることにしましょう。

1 家庭裁判所に着いたら何処に行けばいいのか
まず、家庭裁判所で調停が行われるといっても、実際調停がどの部屋で行われるのか、調停が行われるまでどこで待っていればいいか、わかりませんよね。
そこで、特に調停初日は、家庭裁判所に行ったらまず、調停を担当している書記官室に行くことが重要となります。
その書記官室が分からない場合は、受付があればそこで聞いてもいいですし(横浜家庭裁判所の本庁には入り口入って左手に受付があります)、近くの事務室で聞いてください。
ちなみに東京家庭裁判所や横浜家庭裁判所のような大規模、中規模庁では、調停係が複数ある場合があります。
この場合は、事件番号(「平成○○年(家イ)○○○○号」という体裁で書かれている番号)を伝え、担当調停係を確認することが必要となります。

2 書記官室で伝えるべき内容
さて、調停を担当している書記官室では、まず名前と調停開始時間を伝え、さらに自分が申立人の立場なのか、相手方の立場なのかを伝えて下さい。
そうすると、通常は、「待合室○番でお待ち下さい」、「申立人待合室でお待ち下さい」、「相手方待合室でお待ち下さい」など、待機場所を指示されますので、指定された待合室に向かいます。

3 待合室の雰囲気
待合室ですが、一般的には居心地のいい場所ではなく、狭い空間に所狭しと長いすが並んでいる様な場所です。
少し古びた病院の待合室をイメージして頂けるとよろしいかなと思います。
待合室ですが、小さな支部のようなところでは自分一人しかいないこともありますが、一般的には先客がいます。
調停の当事者ですから、皆さん色々と考えるところがありますので、余り明るい雰囲気ではありません。お互いに干渉しないのがマナーですね。
なお、待合室でよく話す人がいるとすれば、その多くは代理人です。やはり落ち着かない場所なので、雑談をしたりして依頼者である当事者の気持ちを楽にしてあげようとしているわけです。

4 調停委員からの呼び出し
さて、待合室で暫く待っていると、調停委員が時間になると呼び出しに来ます。
最近はプライバシーの問題もあるので、番号で呼ばれたり、小声で呼んだりするところもありますね。
この点に関し、トイレにたまたま行っていて呼び出しの時に待合室にいなかった場合はどうするのかしら、との相談を受けることがありますが、余り心配はいりません。
1回目にいなくても、しばらくたってからまた呼び出しに来るのが通常ですし、いつまでたっても呼び出しに来ない場合は、もう一度書記官室に行って調停委員に連絡をとってもらえばよいのです。

5 調停室の雰囲気
さて、調停委員に呼び出されて、調停室に向かいます。
調停室は一般的には、小さな会議室くらいの大きさで、長机と数個の椅子があるくらいのいたってシンプルなものです。

6 調停初日での最初のやりとり
調停室に入ると、調停委員の先生が座って待っています。
その他、初回の場合は始めから審判官(裁判官)が向こう正面の中央に座っていることがあります。
これは、調停はあくまで主として審判官と調停委員とで構成される「調停委員会」によって行われることになっておりますので、特に調停初日の場合は、けじめの意味で審判官が手続の進行についての説明をすることがあるからです。

 

調停手続の進行についての説明ですが、おおむね以下のような事項について説明されます。
① 調停は、調停委員会(審判官と2名の調停委員)が担当すること
② 調停は、裁判とは異なり、あくまで話し合いによって問題を解決する手続であること
③ 調停では自分の意見を率直に調停委員会に伝えて欲しいこと
④ 調停はあくまでも話し合いによる解決を目指す手続なので、互いに譲れるところがあれば譲り合った上で、双方にとって納得の行く解決を探っていく必要があること
⑤ 調停は、通常は、まず申立人から話を聞き、その後相手方から話を聞くというかたちで入れ替わりで行われること、それぞれの当事者から話を聞く時間はおおよそ20分から30分程度であること
⑥ 調停に要する時間としてはおおよそ1~2時間を予定していること
⑦ 調停は1回で終了するわけではなく、解決のためには複数回開かれるのが通常であること
⑧ 調停は非公開の手続であり、調停委員はそれぞれ守秘義務があるので、話した内容が外部に漏れることはないから、安心して話して欲しいこと
⑨ 当事者間で合意ができた場合は、調停委員会で内容を検討した上で、最終的には審判官(裁判官)立会の上で、調停が成立することになること
⑩ 調停が成立した際に作成される「調停調書」は、裁判の判決と同様の効力があり、場合によっては強制執行も可能になること
⑪ 調停は取り下げが可能であるし、不成立の可能性もあること
⑫ 調停は不成立の場合は、審判や裁判といったその後の紛争解決方法が用意されていること。
ただ、このような説明が全て過不足なく行われるとは限りませんし、調停の説明書が配られた上で、それを読んで下さい、というかたちで簡潔に説明される場合もあります。
また、代理人の弁護士が付いている場合は、説明が省略されるのが通常です。
ただ、この説明には、いくつも重要なことが書かれているので、できれば十分に理解した上で調停に臨んでもらいたいものですね(なお、当コラムでも折に触れて説明する予定です)。
それでは、次回は、調停初日で行われるやりとりについて説明いたします。


離婚調停の手続について引き続き説明いたします。
今回は、調停期日の定め方、調停が行われる場所の事前調査についてです。
なお家庭裁判所における手続の流れや運用は、例えば家庭裁判所の建物の構造やマンパワー、運用、極端なことを言えば家庭裁判所の所長の個性などによっても変わってきます。
これから説明する内容は、あくまで一般的なものですので、ご了解下さい。


1 調停期日の変更
(1) 調停期日の指定
まず、離婚調停が申し立てられると、通常申立から3週間ないし1か月前後を目処として調停期日が定められます。
ただ、この調停期日がいつ指定されるかについては、かなりばらつきがあり、例えば私の経験した例では、調停申立から第1回の調停期日まで3か月以上期間があいてしまった事例もありました。
裁判所の夏季休廷期間や調停室の空き状況などによって変わってきますが、余りに期日指定が遅れているようなら、一度家庭裁判所に問い合わせてみるといいでしょう。
調停期日は、通常、午前の枠か午後の枠のどちらかで開かれます。
出頭時刻ですが、午前の枠であればおおよそ午前10時から午前10時30分ころ、午後の枠であれば午後1時から午後1時30分ころです。
なお、出頭時刻が申立人と相手方とで異なることがありますが、これは当事者同士が裁判所内で直接会わないようにとの裁判所の配慮です。
特にDV(ドメスティックバイオレンス)の事案などでは、待合室の場所や出頭時間に至るまで、事故が起きないように裁判所はかなり神経を使ってくれます。
いずれにしても、調停申立の際に、裁判所に対して「相手方本人と会いたくないので配慮をお願いしたい」と伝えておくことが重要です。
(2) 都合が悪い場合
さて、調停が申し立てられると、調停期日が定められますが、相手方にとっては一方的に期日が定められ、呼び出されることが多いので、その期日に出頭できないこともあります。
この場合は、やはり裁判所に連絡して調停期日を改めて調整して貰うことを考えて下さい。
といいますのも、調停は当事者の話し合いの手続であり、原則として当事者が出頭することが前提とされていますので(本人出頭主義、家事審判規則5条1項本文)、裁判所も当事者双方が出頭できるように配慮してくれることが多いからです。
この点が通常の訴訟手続と異なるところです。
なお、調停期日の変更の申し出それ自体が裁判所の心証を害しないか、心配される方もおりますが、杞憂です。
(3) 調停期日の変更が認められない場合
ただし、調停には調停委員の都合や調停室の空き状況なども関係してきますので、常に期日変更が認められるわけではありません。
「とりあえず、申立人本人から話を聞きますので、次回(第2回調停期日)以降の都合のよい日時を教えて下さい」
とあっさり言われて調停期日の変更が認められない場合もしばしばありますので、必ずしも思い通りにならない場合があることは予め知っておいて下さい。
なお、調停では思い通りにならないことが多々あります。調停期日の変更が認められないことくらい序の口ですので、ここでいらいらしないことが大事です。


2 裁判所の場所の把握
さて、ようやく定まった調停期日ですが、おそらく多くの方にとって余りご縁のない家庭裁判所、場所もうろ覚えのことが多いですよね。
裁判所の場所は例えば丘の上であったり、市街地から遠く離れていることもありますので、長年の土地勘だけではどうにもなりません。
それで調停期日に遅刻するようでは目も当てられませんね。
ですから家庭裁判所の場所については、予め地図などで確認しておくことが必要です。
実は私も裁判所の場所がわからず迷ったことがあります。そのため、それ以後は、やむを得ず、保険でタクシーを利用したりするのですが、タクシーの運転手も「地方裁判所」と「家庭裁判所」の違いが分からないことがあり、一度、とんでもないところに連れて行かれたことがあります。
その時は30分くらい余裕があったので、事なきを得ましたが、冷や汗をかいた記憶があります。
皆さんも注意して下さい。
また裁判所といっても、本庁と支部があります。
例えば、神奈川県の家庭裁判所も、横浜市にある家庭裁判所の本庁のほか、川崎と相模原、横須賀、小田原にそれぞれ支部があります。
間違って支部なのに、本庁に行ったりしないように注意して下さい。
以上、調停に際して注意すべき最初の関門である、調停期日と裁判所の場所の把握、について説明しました。世の中に色々と調停に関する情報が出回っていますが、案外調停期日や調停の開催場所といった基本的なことについての説明が足りないような気がいたしましたので、あえて本コラムで取り上げてみました。


「出るところに出て話合いましょう」
という捨て台詞があります。
この「出るところ」とは何処なのか、については諸説がありますが、争いのないところとしては裁判所があげられるでしょう。
この「裁判所」という場所は、私のような職業の人を除けば、一般的にはそう何回も行くところではありませんし、そもそも裁判所で行われる手続についても意外に知られていません。そのため、一般の方にとって、裁判所では「何をされるのか」という漠然とした不安感があるため、「出るところ」つまり「裁判所」をちらつかせるだけで立派な捨て台詞となり得るわけですね。
これは逆に言えば、「出るところ」ではどのようなルールで、どのような手続が行われるのか、上手に対処する方法は何か、といった前提知識を予め持っていれば、「裁判所」のある種の「得体の知れなさ」が払拭されますので、安心して「出るところ」という言葉を受け止めることができるわけです。
そこで今回は裁判所の手続の一つである「家事調停」その中でも件数が多い「離婚調停」について説明いたします。
なお、これからご説明する内容は、私がこれまで経験した内容を元にしておりますので、地域によっては運用であるとか、考え方などが異なるところがあるかもしれません。その点はご容赦ください。


1 離婚調停とは
さて、離婚調停ですが、正確には「夫婦関係調整調停」といいます。
この夫婦関係調整調停は、大きく分けて「夫婦関係調整調停(離婚)」と「夫婦関係調整調停(円満)」の2つに分けられます。
離婚を求めるのに、なんで「夫婦関係調整」なんだ、と思う方もいるかも知れませんが、調停はあくまでも話し合いの場ですので、話し合いの結果離婚をしないという結論に至る可能性もあります。
そのため、「夫婦関係調整」という中立的な言葉を用いるのです。
もちろん、それでは目的がはっきりしませんので、やはり最後には(離婚)(円満)という言葉を付記します。言葉の使い方からして気を使っていますね。


2 離婚調停での登場人物
次に離婚調停にはどのような人物が参加するのか、について説明します。
(1) 当事者
まず当然ですが、「当事者」です。当事者を更に分けると、「申立人」と「相手方」になります。
「申立人」とは離婚調停を申し立てた人、つまり離婚を求める人、「相手方」とは離婚を求められている人のことをいいます。よく裁判では「原告」「被告」という言葉が用いられますが、調停はあくまでも話し合いの場ですので、対立関係を煽るような言葉は使いません。ここでも気を遣っているわけですね。
(2) 家事審判官
「家事審判官」とはいわゆる裁判官のことです。
この「家事審判官」がこれからお話しする2名以上の「家事調停委員」を指定したうえで「調停委員会」を組織します。
ただ、家事審判官は、大変お忙しいので、例外的な場合を除いては調停に実際に参加して当事者から話を聞くことはありません(ただ話が膠着(こうちゃく)したような場合や、調停内容を最終的に調整する目的で話し合いに参加することはあります)。
また「調停委員会」といっても、国会の「予算委員会」などといったかしこまった会議体ではありません。審判官と調停委員で構成されたチームの呼称くらいに思って頂いて結構です。
(3)家事調停委員
次に「家事調停委員」ですが、この方々こそが、家事調停での主要なプレーヤーの一人になります。
調停委員は、非常勤の裁判所職員で、弁護士の資格を有する者、紛争の解決に有益な専門的知識・経験を有する者から選任される専門調停委員のほか、社会生活の上で豊富な知識・経験を有する者で、人格・識見の高い者の中から選任される調停委員もおります。
このうち、事案が複雑な事件では弁護士の調停委員や専門調停委員が選任されることもありますが、離婚調停では専門調停委員が選任されることは少なく、一般には、「人格・識見の高い者」の中から選ばれた方が調停委員に選任されます。
離婚調停に関わる調停委員は概ね40歳くらいから60歳くらいまでの方が中心で、男女それぞれ1名ずついます。
元の、あるいは現在の職業については詳しく聞くことはないのですが、例えば公務員を長年やっていたり、学校の先生であったり、様々です。
私の勝手な感想で恐縮ですが、調停委員の先生は、さすが人生経験が豊富だなと思わせる常識的な方が多いとの印象を受けます。
むしろ、私自身、調停委員に対して何らかの不満が生じた場合は、一度自分の調停での態度などを自ら検証し、問題がないか確認するように心がけているくらいです。
まあ確かに調停委員の先生の中には、相手方の話をただ伝えているだけという方もおられますが、それはそれで中立的であるともいえますので、仕方がない部分があります。
最終的には相性の問題であると考えます。
このように、私は家事調停委員の立場や役割をとても重視しておりますが、それはひとえに家事調停の成否を決めるのは調停委員であると考えるからです。
調停委員とのやりとり、話し合いの進め方については次回以降のコラムで説明いたします。
(4) 代理人
代理人とは当事者に代わり、当事者とともに家事調停にて話し合いを行う立場の者です。
我が国では弁護士だけが家事調停の代理人になることができます。
よく家事調停で親御さんが付き添ってきて、一緒に調停室に入ろうとする方がおられますが、例え親族でも当事者でない限り調停室に入ることはできません。
もちろん司法書士の先生も行政書士の先生も調停室に入ることはできません。
つまり家事調停の代理人は弁護士だけがなれますので、その職責は重いです。
さて家事調停の代理人の職務は、家事調停の中で紛争の中心点を早期に把握し、話し合いのきっかけを探り出し、互いに妥協できるポイントを見据えたうえで、依頼者のために調停委員その他の関係当事者と折衝し、妥当な結論を導くことです。
言葉にすれば簡単ですが、あくまでも最終目標は依頼者の意思を実現することですから、裁判などと異なり、単純な勝ち負けだけでは割り切れない要素が沢山あります。
私の感想としては、家事調停の代理人にはそれなりの経験が必要であると感じます。
(5) 家庭裁判所調査官
以上のとおり、調停の参加者は、当事者、審判官、調停委員、代理人弁護士などがおりますが、その他に家庭裁判所調査官も重要な立場の方です。
家庭裁判所調査官は、調停期日に出席して当事者の解決の糸口を探り、調整的な役割を果たすことが求められている専門的公務員です。
代理人と職務が一部かぶりますが、調査官は中立的な立場である点、心理学、社会学、教育学、社会福祉学等の人間関係諸科学の専門的知識を有している点で、法律の専門家であり代理人である弁護士と役割を異にしております。
今回は、主に調停の登場人物について説明いたしましたが、次回は、調停手続について、どのようなやりとりがなされるのか、順を追って説明いたします。