千歳・大石法律事務所は横浜・関内の法律事務所です。

横浜・関内 千歳・大石法律事務所

(これからお話しするストーリーは手続を説明するためのフィクションであり、「ミナト木材加工株式会社」も特定の会社を想定したものではありません)
イントロダクション
A氏の場合①

A氏の場合②

3 意外な言葉

「あなたの行動は間違っていませんよ」
弁護士から言われた言葉は意外なものだった。

「もちろん、会社の資金繰りが苦しくなったことについて、あなたの経営に全く問題がなかったかといえば、あるのかもしれませんがね。
でも、今あなたがしなければならないことは、過去を反省するというよりも、将来に向けて最善を尽くすということですよね」
「その意味ではあなたは正しい行動をしています。専門家に相談した、という一点においてね。」

「逃げたことにはなりませんか?」

「資金繰りが苦しくなった経営者にありがちなのは、「自分で何とかする」というものです。もちろん経営者として業務改善に努力するというのは当然ですが、あなたの会社のように今日か、明日か、に資金繰りがショートするといった状態になってしまった場合は、経営者の頑張りだけでどうにかなるものではありませんよね。むしろ、頑張りすぎることは、冷静な目線を失わせることにもなるんです。だから、あなたが、自分だけで何とかしようと思わずに、弁護士や税理士や会計士に相談しようと思ったということは、正しい行動なんですよ。だから自信をもってください」

A氏は、ここ数日で初めて前向きな話を聞いたような気がした。
状況は最悪だし、破産の可能性もあるかもしれないが、自分のとった一つ一つの行動に自信をもってやるしかない。
そう覚悟を決めたA氏は、電話を切り、1月25日の相談に向けて準備を進めることとした。その矢先に、得意先の一社から一本の電話があった。

「お宅の会社、何か問題があるの?今日国税局の担当者が取引について尋ねに来たよ」
次回に続く


(これからお話しするストーリーは手続を説明するためのフィクションであり、「ミナト木材加工株式会社」も特定の会社を想定したものではありません)
イントロダクション
A氏の場合①

2 法律事務所に電話した

A氏は、会社の名称などを簡単に伝えた上で、現在会社の資金繰りが急速に悪化していること、長年取引を続けてきた取引先から突然取引の停止を通告されたため、月末の支払ができないこと、できるだけ早い時期に弁護士と相談したいこと、などを説明した。
焦っていたため、うまく伝わったかどうか心配であったが、少なくとも急ぎの相談であることは理解してくれたようだった。

電話口で応対してくれた女性は、しばらく弁護士と相談し、近い日時で相談日程を調整してくれた。

また、同時に、弁護士からの指示ということで、直近5期分の決算書と登記事項証明書、銀行預金通帳、そしてできればということではあったが、金融機関から借入をしている場合は借入残高と返済額がわかるような資料、取引停止を通告された取引先の通知書やその他の関連書類、最後に会社の代表者印なども持ってくるように言われた。
また、従業員に対しては、必要がない限り、資金繰りが悪化していることや弁護士に相談しに行くことなどといったことは話さないように念を押された。

A氏は、早速、経理を担当する従業員に対し、決算書、登記事項証明書、最新記帳した銀行預金通帳、銀行との間で取り交わされた消費貸借契約書を用意するように指示した。
ただ取引先からの通知書については、担当の社員が出張で本社にいないため、必要な資料を集めることはできそうになかった。

慌ただしく相談の準備を続けるA氏であったが、これから会社がどんな運命になっていくのか、80年も続いたミナト木材加工株式会社を自ら潰すことになってしまうのか、もしも破産するとなったら裁判所ではどんなことを言われるのか、債権者から袋だたきに遭うのではないか、など、必要な資料を集め切れていないこともあり、様々な不安が繰り返し頭をよぎった。

不安は翌日になっても消えることがなかったため、再び法律事務所に電話したところ、慌てた様子を察してくれたようで、弁護士にそのままつないでくれた。
応対してくれた弁護士は、落ち着いた声で、次のように話してくれた。
次回に続く


マーガレット
チューリップ
ラナンキュラス
ほんわり春らしい色合いです。
風邪が流行っていますが皆様お気を付けください。


(これからお話しするストーリーは手続を説明するためのフィクションであり、「ミナト木材加工株式会社」も特定の会社を想定したものではありません)
第1章

1 取引先から取引の停止を通告された!!
A氏が経営するミナト木材加工株式会社は、複数の住宅メーカーからの下請けで木材を工場で加工し、住宅用の建材として納入している。
会社の歴史は古く、かつて横浜に貯木場があった時代から80年以上続く老舗である。

A氏は祖父から数えて3代目の社長であり、50歳である。妻と、今度大学に入学する18歳の娘がいる。

発行済み株式総数は500株。A氏が300株、その妻Bが100株、その他かつて大手住宅メーカーで同僚であった知人のCが100株を有している。
会社は取締役会設置会社であり、Aが代表取締役、妻Bが取締役、Cが監査役である。

従業員は20名ほどで、うち10名はパートタイマーである。
給与の合計は役員の報酬を除いて月額500万円程度であり、役員報酬はAとBを合計して月額100万円、Cは無報酬である。
支払は当月末日締め、翌月25日払いである。

工場は横浜市の磯子区にあり、本店事務所もその工場内にある。工場は借家であり、家賃は月額100万円、翌月末日払いである。

工場内には大小様々な機械があるが、そのうち数台は住宅メーカーから貸与を受けたものであり、残りの機械は会社所有とリースとに分けられる。
ミナト木材加工株式会社は、複数の木材会社から材料となる木材の供給を受けている。
支払い方法は様々であるが、中には手形で支払をしているものもある。材料費は700万円程度である。
手形の決済は毎月10日である。

その他の固定費は100万円程度である。

甲銀行からは証書貸付で合計2億円程度の借入があり、A氏が連帯保証人になっている。A氏は自宅を有しており、すでに住宅ローンは完済しているが、この甲銀行の連帯保証債務について抵当権がついている。
毎月の返済額は元利込みで200万円である。
借入目的は、工場拡張に伴う設備費用である。

消費税の滞納もあり、合計5000万円程度あるため、税務署からは度々督促を受けている状況であるが、すでに慣れっこになっている。これに対し、年商(年間売上)はおよそ2億円。月平均にならすと、おおよそ1600万円程度である。

以前は年商3億円程度あったが、
海外の安い建材に押されて売値が抑えられた結果、現在のような売り上げとなっている。

ミナト木材加工株式会社はそれなりの年商を記録しており、周囲からは優良企業として認められていたが、売り上げの低迷が続いたため、実際のところは売り上げから材料費や固定費、人件費、返済金を差し引くとほとんどキャッシュが残らない状態であり、そのため現実には役員報酬をカットすることで資金繰りをしのぐ状態であった。

ところが、平成26年1月6日、新年早々事態が急変することになる。
突然住宅メーカーの乙社から内容証明郵便で3000万円の損害賠償請求と今後の取引の停止を通告されたのである。

その内容というのも、ミナト木材加工株式会社が納入した建材にシロアリが混入していた、というもの。
そのため住宅の施主から損害賠償請求の訴訟を提起されたため、住宅メーカーの責任追及の過程の中でミナト木材加工株式会社の名前が浮かんだというわけである。

ミナト木材加工株式会社にとって乙社は売り上げの3割を占める重要な顧客であり、乙社から取引を停止されることは会社にとって文字通り死活問題である。
そこで、A氏は乙社の本社を訪ね、担当部長に取引の停止を思いとどまるように説得したが、部長は本社の方針なのでといってとりつく島もなかった。
なお、内容証明郵便で通告された内容は、損害賠償請求権と乙社の○○株式会社に対する支払債務とを相殺する、というものであった。
乙社の代金支払い予定日は1月15日であり、その日に1000万円の支払がある予定であったが、この通告は、1月15日の支払がなされないことを意味していた。

このままでは従業員の給与を支払ってしまうと、1月末日に予定されている木材会社に対する買掛金を支払うことができなくなってしまう。

窮したA氏はすがる思いでインターネットを検索し、たまたまヒットした横浜の法律事務所に電話を掛けた。
次回に続く


 当事務所の代表弁護士は、これまで会社の破産手続を多く手がけており、その関係で、会社あるいは個人事業の経営が苦しくなった、ということでご相談に来られる方が多くおられます。
 あるいは、第三者から、あの会社はどうやら経営が苦しいようだから、何とかしてくれないか、といった相談も受けることがあります。
 その多くが、「資金繰り」に関する問題であり、もう少し平たく言えば、買掛金や未払い金の支払期日が迫っているが、資金の手当てがないといった問題です。
 場合によっては、既に未払の債務が積み上がっていて、文字通り首が回らない状態で相談に来られる方がおります。


 相談に来られる方は余程の方でない限り皆切羽詰まっています。特に代表者本人も金融機関の連帯保証人になっているなどして、債務者になっている場合などはなおさらです。
 また、多くの方は、長年続けてきた会社を何とか建て直したいと考えております。
 特に親から引き継いだ会社や多くの従業員がいる会社ならなおさらでしょう。
 

 弁護士は、そうした多くの切実な思いを受け止めながら、法律の専門家として様々なアドバイスをし、時には代理人として代表者、従業員とともに活動していくわけです。

 これから何回かにわたって、会社の破産、再生といった手続について説明する予定ですが、皆さんの中には文献や第三者からのアドバイスなどで色々な情報を得ている方もおられるでしょうから、当コラムではイメージを持ってもらうために、もう少し生々しい具体的な内容を説明することといたします。
 その上で、破産手続やその他の手続について出来るだけわかりやすく説明する予定です。
 

なお、当事務所は法律事務所であり、会計事務所ではありませんので、当コラムでも例えば財務諸表の分析の方法といった部分については必要に応じて説明するにとどめます。
 「餅は餅屋」ということわざがあるように、専門家にはそれぞれ得意とする分野があります。弁護士は仮に財務諸表の分析が得意でも、結局は税理士や公認会計士に任せた方がいい分野が、破産手続きやその他の再生手続にはかなりあります。
 ただし、全体的な流れを把握し、最後まで、例えば裁判所において破産手続きが終結するまで、面倒を見ることができる、というのが弁護士であるともいえるので、当コラムでもそのような視点で説明していく予定です。


 最後に、これから当コラムで触れるストーリーや具体例は、私が実際に経験した事実を元にしてはおりますが、特定の事件を示すものではありません。多くの事例においておおよそ共通に見られる事情を元にしている、ということはご了解下さい。
次回に続く


本日も外は極寒ですが、事務所の中には一足早い春がやってきました。


チューリップ、スイートピー、ガーベラをコデマリが引き立てていますね。


梅と、鉄砲百合の組み合わせです。

寒い日が続きますが、お花から春を感じています。


20140106


本年もよろしくお願いいたします。
今週のウェルカムフラワーはとてもお正月らしく、
お花の中心に獅子舞が。
ちょこん!



事務所のドアを開けると、菊のいい香りがしてきます。