
(これからお話しするストーリーは手続を説明するためのフィクションであり、「ミナト木材加工株式会社」も特定の会社を想定したものではありません)
イントロダクション
A氏の場合①
3 意外な言葉
「あなたの行動は間違っていませんよ」
弁護士から言われた言葉は意外なものだった。
「もちろん、会社の資金繰りが苦しくなったことについて、あなたの経営に全く問題がなかったかといえば、あるのかもしれませんがね。
でも、今あなたがしなければならないことは、過去を反省するというよりも、将来に向けて最善を尽くすということですよね」
「その意味ではあなたは正しい行動をしています。専門家に相談した、という一点においてね。」
「逃げたことにはなりませんか?」
「資金繰りが苦しくなった経営者にありがちなのは、「自分で何とかする」というものです。もちろん経営者として業務改善に努力するというのは当然ですが、あなたの会社のように今日か、明日か、に資金繰りがショートするといった状態になってしまった場合は、経営者の頑張りだけでどうにかなるものではありませんよね。むしろ、頑張りすぎることは、冷静な目線を失わせることにもなるんです。だから、あなたが、自分だけで何とかしようと思わずに、弁護士や税理士や会計士に相談しようと思ったということは、正しい行動なんですよ。だから自信をもってください」
A氏は、ここ数日で初めて前向きな話を聞いたような気がした。
状況は最悪だし、破産の可能性もあるかもしれないが、自分のとった一つ一つの行動に自信をもってやるしかない。
そう覚悟を決めたA氏は、電話を切り、1月25日の相談に向けて準備を進めることとした。その矢先に、得意先の一社から一本の電話があった。
「お宅の会社、何か問題があるの?今日国税局の担当者が取引について尋ねに来たよ」
(次回に続く)