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(これからお話しするストーリーは手続を説明するためのフィクションであり、「ミナト木材加工株式会社」も特定の会社を想定したものではありません)
第1章

1 取引先から取引の停止を通告された!!
A氏が経営するミナト木材加工株式会社は、複数の住宅メーカーからの下請けで木材を工場で加工し、住宅用の建材として納入している。
会社の歴史は古く、かつて横浜に貯木場があった時代から80年以上続く老舗である。

A氏は祖父から数えて3代目の社長であり、50歳である。妻と、今度大学に入学する18歳の娘がいる。

発行済み株式総数は500株。A氏が300株、その妻Bが100株、その他かつて大手住宅メーカーで同僚であった知人のCが100株を有している。
会社は取締役会設置会社であり、Aが代表取締役、妻Bが取締役、Cが監査役である。

従業員は20名ほどで、うち10名はパートタイマーである。
給与の合計は役員の報酬を除いて月額500万円程度であり、役員報酬はAとBを合計して月額100万円、Cは無報酬である。
支払は当月末日締め、翌月25日払いである。

工場は横浜市の磯子区にあり、本店事務所もその工場内にある。工場は借家であり、家賃は月額100万円、翌月末日払いである。

工場内には大小様々な機械があるが、そのうち数台は住宅メーカーから貸与を受けたものであり、残りの機械は会社所有とリースとに分けられる。
ミナト木材加工株式会社は、複数の木材会社から材料となる木材の供給を受けている。
支払い方法は様々であるが、中には手形で支払をしているものもある。材料費は700万円程度である。
手形の決済は毎月10日である。

その他の固定費は100万円程度である。

甲銀行からは証書貸付で合計2億円程度の借入があり、A氏が連帯保証人になっている。A氏は自宅を有しており、すでに住宅ローンは完済しているが、この甲銀行の連帯保証債務について抵当権がついている。
毎月の返済額は元利込みで200万円である。
借入目的は、工場拡張に伴う設備費用である。

消費税の滞納もあり、合計5000万円程度あるため、税務署からは度々督促を受けている状況であるが、すでに慣れっこになっている。これに対し、年商(年間売上)はおよそ2億円。月平均にならすと、おおよそ1600万円程度である。

以前は年商3億円程度あったが、
海外の安い建材に押されて売値が抑えられた結果、現在のような売り上げとなっている。

ミナト木材加工株式会社はそれなりの年商を記録しており、周囲からは優良企業として認められていたが、売り上げの低迷が続いたため、実際のところは売り上げから材料費や固定費、人件費、返済金を差し引くとほとんどキャッシュが残らない状態であり、そのため現実には役員報酬をカットすることで資金繰りをしのぐ状態であった。

ところが、平成26年1月6日、新年早々事態が急変することになる。
突然住宅メーカーの乙社から内容証明郵便で3000万円の損害賠償請求と今後の取引の停止を通告されたのである。

その内容というのも、ミナト木材加工株式会社が納入した建材にシロアリが混入していた、というもの。
そのため住宅の施主から損害賠償請求の訴訟を提起されたため、住宅メーカーの責任追及の過程の中でミナト木材加工株式会社の名前が浮かんだというわけである。

ミナト木材加工株式会社にとって乙社は売り上げの3割を占める重要な顧客であり、乙社から取引を停止されることは会社にとって文字通り死活問題である。
そこで、A氏は乙社の本社を訪ね、担当部長に取引の停止を思いとどまるように説得したが、部長は本社の方針なのでといってとりつく島もなかった。
なお、内容証明郵便で通告された内容は、損害賠償請求権と乙社の○○株式会社に対する支払債務とを相殺する、というものであった。
乙社の代金支払い予定日は1月15日であり、その日に1000万円の支払がある予定であったが、この通告は、1月15日の支払がなされないことを意味していた。

このままでは従業員の給与を支払ってしまうと、1月末日に予定されている木材会社に対する買掛金を支払うことができなくなってしまう。

窮したA氏はすがる思いでインターネットを検索し、たまたまヒットした横浜の法律事務所に電話を掛けた。
次回に続く