千歳・大石法律事務所は横浜・関内の法律事務所です。

横浜・関内 千歳・大石法律事務所

千歳法律事務所代表の千歳です。
前回のコラムでは、第2回調停期日以降の手続、とりわけ調停の成立に向けての「決断」の重要性についてお話ししました。
今回は、調停で合意が成立した場合の手続についてお話しいたします。

1 調停での合意内容
すでにお話ししましたとおり、離婚調停では、離婚をするかしないか、という本体の話のほか、未成年の子供がいる場合は、親権者の指定、養育費の取り決め、面会交流の日程調整、夫婦共同の財産がある場合は財産分与、何かしらの慰謝料原因がある場合は慰謝料の額、年金分割の按分割合、などについて話し合われます。
その結果、申立人(調停を申し立てた人)と相手方(調停を申し立てられた人)との間で合意があった場合は、調停が成立となります。
なお、合意すべき内容は今お話ししたとおり多岐に上りますが、全ての問題について合意しなければ、調停が成立しない、ということではありません。
実際には、離婚そのものについては合意したが、年金分割の按分割合についてどうしても合意ができなかった、という場合でも、按分割合については審判(話し合いではなく、裁判官が職権で証拠調べを行うなどして決定する手続)で決定してもらう前提で、とりあえず離婚について調停を成立させる、という場合もあります。
ただ、年金分割の按分割合を残して他の部分で調停を成立させるのは、それなりの腹づもりがあってのことです。
つまり、年金分割の按分割合については、余程の事情がない限り0.5(つまり50%)の決定が出るので、あえて調停で無理して合意しなくても審判で想定通りの決定がなされるであろうとの打算があるんですね。
これは逆に言えば、ある程度結論が見通せない問題については、問題を先送りせず、やはり、調停の中で合意を目指していくべきだということになります。

2 合意が成立したら
調停で合意が成立した、または合意できそうだ、という段階になりますと、実際に調停調書にどのような内容の文言を載せるかといった具体的な話になります。

(1) 調停調書とは
ここで「調停調書」という言葉が出てきたので、簡単に説明します。
まず、家事調停において、当事者間で合意が成立し、調停機関がその合意を相当と認めてこれを調停調書に記載したときは、合意に相当する審判をすべき事項を除いて、調停が成立したものとし、その記載は、訴訟事項については確定判決と同一の効力を有し、また、乙類審判事項については確定判決と同一の効力を有するとされております(家事審判法21条1項、2項)。
これを平たく言うと、調停手続は、当事者間で合意が成立し、これを調停調書に記載されることで初めて「成立」するということを意味します。
また、調停調書の記載事項の中には、確定判決と同一の効力、つまり、裁判で判決が出た場合と同じ効力が発生する、ということも意味します。
つまり調停調書は極めて重要な文書であり、その内容については慎重な吟味が必要なのです。
ただ、実際の離婚調停では、予め定型的な調停文言が用意されていて、大多数の調停では、その文言にしたがって調停調書が作成されます。
例えば、
「申立人と相手方は、本日、調停離婚する。」や、財産分与に伴う解決金を支払う旨の条項などは、ほぼ定型化された文言を外れることはありません。
それには理由があって、調停離婚を確実に戸籍に反映するためには、誰が見ても調停離婚が成立したことが明らかな文言にしなければなりませんし、金銭の支払いが絡む条項については、強制執行力が発生するので、執行の段階で誤解が生じないように、間違いがない文言を掲載する必要があるからです。
ここは案外重要なポイントであり、代理人弁護士も慎重な判断が求められるところです。

(2) 調停の成立
さて、調停調書の内容がある程度固まりますと、通常一般は、調停委員の先生が審判官(裁判官)と相談するために一旦席を外します。
それは、調停委員、審判官によって構成される調停委員会で合意内容を検討する必要があるからです。
その結果問題がない、ということになれば、審判官、調停委員、書記官が調停室に行き、調停委員がそれぞれの当事者を調停室に呼び出します(調停成立の段階で相手方当事者と同席することができない場合は、時間をずらすことも、例外ですがあります)。
その後、審判官が当事者双方の面前で調停条項を読み上げて、双方に対しその内容でよいか確認します。
これに対して当事者がその内容でよい、と答えた段階で一般的には調停が成立することになります。
厳密に言えば、その後書記官によって調停条項を「調停調書」という形で書面にした段階で調停が成立したことになるのですが、書記官は調停調書を急いで作成してくれますので、時間的な離隔は僅かであり、現実にはそれで問題になることはまずありません。
なお調停調書の作成には印紙が必要です。詳しくは調停成立後、書記官が説明してくれますが、一応頭に入れておくとよいでしょう。
次回は調停成立後の手続について説明いたします。