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横浜・関内 千歳・大石法律事務所

千歳法律事務所の代表弁護士の千歳です。
さて、これまで6回に分けて、「離婚調停の上手な対処法」と称して特に離婚調停(夫婦関係調整調停(離婚))を中心に、具体的な手続について説明して参りました。
今回は、第2回調停期日以降の具体的な手続の内容とその対処法について説明いたします。なお、これまでもご説明しているとおり、調停は主として「家事審判法」という法律によって手続きが定められていますが、具体的な手続の進め方は裁判所やそれぞれの調停委員会に委ねられております。
そのため、私がこれまで説明してきた手続の内容と実際に行われている手続とが若干異なってくる場合もあり得ます。
むしろ、家事審判法の大枠の中でそれぞれが裁量を発揮して紛争解決に努力することこそが家事調停の使命であるとすれば、このように、調停手続毎に微妙な違いが生じるというのは、調停らしいともいえるのですが、みなさんも、そのような調停の本質をご理解頂いた上で、このコラムをご覧頂ければ幸いです。


1 調停期日初日と2回目以降の調停期日との違い
本題に移ります。
まず、調停期日の初日と2回目以降の調停期日との違いですが、家事審判官と調停委員によって構成される調停委員会が中心となって、当事者双方から交互に話を聞く、という基本的なスタイルは、どちらも変わりがありません。
変わってくる点と言えば、話し合いの内容そのものです。
つまり、初日は主として双方の言い分を調停委員会が聞くことが中心でしたが、2回目以降は、述べられた広範な事実関係から争点を抽出し、双方が合意できるラインを慎重に、時には大胆に探っていくこと、つまり合意の形成に向けて具体的な話し合いを行っていくことが中心となります。

(1) 初回の調停期日
もう少しわかりやすく説明しますと、調停初日でももちろん何が問題となっているのか、について争点を絞る努力はしますが、それこそ調停委員会としても当事者がどんな態度で調停に参加しているのかわかりませんし、双方が話合いのテーブルにつくためには、当事者に言いたいことを言って貰ってガス抜きをするという必要もありますから、まずは当事者の話をじっくり聞くという展開になることが多いです。
そして、当事者から詳しく事情を聞くことで、当事者の個性、例えば感情的なタイプであるか、冷静な話し合いに応じることができるタイプかといったところを把握し、それぞれの個性を踏まえた話し合いの方法を探っていくわけですね。
要するにまずは様子見ということになるわけです。

(2) 2回目以降の調停期日
他方、2回目以降の調停は、初回の調停で双方から述べられた主張を踏まえて、争点を絞り、双方の合意を探っていくことになりますので、調停委員の先生方も、折り合いのよい妥協点に向けて、時には説得し、時には当事者に自ら解決案を提示させるなどしていくことになります。
つまり、具体的な話し合いが行われるわけです。
代理人弁護士である私たちも、ただ漫然と調停に臨んでいたのでは調停委員の考えに付いていくことができませんので、事前に十分な準備をし、調停委員や相手方の対応を予測し、予め合意できるポイントをイメージしながら調停に参加することになります。
また、私の経験では、調停委員の先生の中には、あえていらいらした態度を見せたり、突き放したり、時には議論を持ちかけるなど、当事者(時には代理人)との距離感を図りつつ、巧みに話し合いを主導していく方もおられます。
代理人も調停委員と激しい議論を交わしながらも、頭では冷静に、なぜこの場面で議論をするのか、その必然性を冷静に見極めていたりするわけです。
調停とは、予め手続の大枠が定められた交渉ですが、当事者双方はそれぞれの背景(バックボーン)を抱える大人であり、それなりに面子やプライドがあるわけですから、単に「話せば分かる」というスタンスでは交渉の入り口に立つことすらできません。
そのため、当事者との距離を詰めたり、離したりという微妙な駆け引きが重要になってくる場面が多々あるわけです。
調停委員の先生の中にはそういった大人の駆け引きを実にうまく体現している方がおられますが、代理人弁護士としてもそういう調停委員にあたったときは、色々と勉強になります。

2 決断の重要性
さて、2回目の調停ではこのように、合意点に向けて具体的な話合いがなされることになりますが、それは逆に言えば、それぞれの当事者にとって受け入れられる合意かどうかの決断をシビアに迫られるということを意味します。
例えば、離婚調停で、あなたが離婚を求められる相手方として、以下のような事実関係があったとします。
「自分としては長年連れ添った相手方から離婚を切り出され困惑しているところで、突然の調停の申立て。仕事を休んで家庭裁判所に出頭し、色々と事情を説明したけれども、調停委員の話では、相手方の離婚の意思は固く、元の生活に戻る意思はなさそうである。
自分は夫婦関係が円満だったときのよい記憶を思い出し、何故その頃に戻らないんだと泣き叫びたい気持ち。でも調停委員も自分の話を親身に聞いてくれた上で、自分の将来を考えたら離婚も一つの選択肢ではないか、と提案してきている。」
このような場合において、離婚を決断し、あとは離婚条件を詰めていく、という決断をするか、離婚を拒否し、争う方向にもっていくかは、あなたの決断にかかっています。
人生を左右する重大な決定を、当事者として合理的に損得を見極めつつ、感情的な部分を抑えつつ決断しなければなりません。
しんどいですが、このような決断が必要とされるのが調停です。
もちろん、こうした決断を行うにはそれなりの時間がかかるものですから、意思表明については次回以降に持ち越されることが多いですし、そもそも期限を定めずに、「これから少しずつ考えていって下さいね」と熟慮期間が与えられるも多いですが、調停とは双方が下りてこなければ合意自体が成立しないわけですから、どの立場であったとしてもこういったシビアな決断が求められる時期があるんだということは、ご理解ください。
代理人弁護士としては、こういった場面で、その決断をすることのメリット、デメリットを説明したり、ここを認める代わりにこの部分は相手に決断を求めよう、といった形で交渉の道筋を提案していくことになるわけですね。
なお、決断は、他にも例えば「親権」、「面会交流の可否、タイミング」、「財産分与の対象財産の特定」等、様々な場面で要求されます。
今回は、初回調停期日と2回目以降の調停期日との間の話し合い内容の違い、そして調停には多かれ少なかれ、当事者が決断をする場面があることについて説明しました。
次回は、調停で合意が成立した場合の手続について説明いたします。