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前回までは、夫婦関係調整調停(離婚)について、具体的に説明して参りましたが、これからは、実際に調停離婚が成立した後の手続についてご説明いたします。
既にご説明しましたとおり、離婚調停のメインはまさに裁判所内で行われる話し合いであり、調停が成立すると、申立人(調停を申し立てた人)であろうと相手方(調停を申し立てられた人)であろうと、とりあえず精神的なストレスから開放されますので、ほっとすることになります。
しかし、手続自体は終了しましたが、離婚調停には後始末があります。

1 離婚の届出
例えば、調停離婚は調停成立の日に効力が発生しますので、協議離婚のように市町村役場に離婚届を提出する必要がないようにも思えますが、実際には離婚の事実を戸籍に反映させる必要がありますので、やはり役場に離婚届を提出しなければなりません。
(1) 届出義務者
まず誰が離婚届を提出するかですが、原則は申立人、つまり離婚を求めて調停を申し立てた人です。
ただし、調停条項で「相手方の申し出により本日調停離婚する」との文言が付け加わった場合は、相手方に離婚届出を行う義務が生じることになります。
なお、相手方の申し出により調停離婚するとは、離婚を申し立てられた側からすると矛盾するようですが、案外調停をやっていると見られるものです。
つまり、離婚を求められたという体裁を好ましくないと思う当事者がいるということですね。
離婚調停は身分関係のややこしい部分に立ち行って話合うことになりますので、相手方の心情に配慮して文言で工夫する時によく用いられるわけです。
なお、届出義務がある人が後に述べます届出期間内(調停成立の日から10日以内)に離婚の届出をしなかった場合は、もう片方の当事者からも離婚の届出をすることができるようになります。

(2) 届出場所
届出場所ですが、夫婦の本籍地か届出人の住民票上の住所にある市町村役場になります。

(3) 必要書類
必要書類ですが、① 調停調書謄本 ② 離婚届書 ③ 夫婦の戸籍謄本 の3つです。

① 調停調書謄本このうち、調停調書謄本は、成立した調停の内容が記載された裁判所作成の文書ですが、作成には通常2~3日程度の時間を要するため、確実に調書を受け取れるように、調停が成立した後に、印紙を貼付の上で調停調書の交付申請書を予め提出しておき、できあがり次第連絡をもらって裁判所に直接取りにいくか、郵便で配送してもらうなどの方法をとることになります。
なお、調停調書謄本にも色々なバージョンがあります。
具体的には、単純な離婚だけの調停であっても、一般的にはフルバージョンの調停調書と戸籍課提出用の謄本の2部が渡されることになります。
これは、例えばフルバージョンの調停調書だけ渡されたとすると、離婚届けの提出の際に調書を渡してしまうと、手元に何も残らなくなってしまい、不都合だからですね。
その代わり、戸籍課提出用の調停調書の謄本には、戸籍記載事項以外が省略された省略謄本が渡されます。
その他の文言(例えば養育費の支払い等)は、離婚そのものの届出に関しては不要だからですね。
その他にも、例えば年金分割の按分割合を定めた場合は、年金分割手続用の省略謄本が渡されることになります。

② 離婚届出書
次に、離婚届出書ですが、調停離婚専用の届出書が別途あるわけではありません。一般に役場で配布されている離婚届出書に記入して提出することになります。
なお、この際相手方の署名捺印や証人2人の記載は不要です。調停離婚はすでに成立しており、離婚届出書の提出はいわば報告にすぎないからです。

③ 夫婦の戸籍謄本
さらに夫婦の戸籍謄本ですが、夫婦の本籍地以外の市区町村役場で届出をする場合に限り、夫婦の戸籍謄本が必要となります。
逆に言えば、夫婦の本籍地の役場に届出をする場合は不要です。

(4) 届出期間
最後に届出期間ですが、調停成立の日から10日以内です。
これが案外タイトで、調停調書謄本の完成が数日遅れるなどしてしまうと、それこそ1週間程度の時間的猶予しかありません。
そのため、ある程度離婚調停成立の見通しが立っている場合は、予め戸籍謄本の取り寄せをしておくなど、それ相応の準備をしておいた方が良いでしょう。
以上が離婚の届出の手続ですが、おわかり頂けましたでしょうか?
事後処理については細かい手続が絡むので、意外に落とし穴になる場合があります。
弁護士に相談するなどして、慎重に対応することが重要です。