千歳法律事務所の代表千歳です。
さて、当事務所では遺産分割の相談を数多く受けておりますが、遺産分割の相談で大事なのは、
相続人が誰で、遺産がどれくらいあるのか、です。
そこで当事務所では法律相談の前に相続人や遺産の概要が分かるような資料をご準備いただいております(もちろん、資料がない方も沢山おられますし、そもそもどんな資料を要していけばよいか分からない方もおられます。この場合は、とにかく口頭でご説明頂ければ対応が可能です)。
この時よく話題になるのが、預貯金は遺産になるのか、という問題です。
これについては驚かれる方も多いのですが、預貯金は相続開始とともに当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属するとされており、預貯金は当然には遺産分割の対象となるものではない、というのが最高裁判所の見解です(最判昭和29年4月8日判決)。
もう少し平たく言えば、預貯金は原則としては遺産に含まれない、ということです。
でも実際には預貯金も含めて遺産分割協議がなされることがありますよね。
もちろん預貯金を含めて遺産分割をすることも違法ではありませんが、これは相続人間で預貯金を遺産分割の対象とすることの合意があるから、許されているんですね(東京高裁平成14年2月15日決定)。
この問題は結構重要で、実は弁護士でもよく分かっていらっしゃらない方がいるので、注意が必要です。
実務では、相続人から預貯金を遺産分割の対象としないという積極的な申し出がない限り、合意があるものとみなしてそのまま分割対象に含めてしまうことが多いので、このような勘違いが生じてしまうのですね。
また、預貯金が原則相続開始によって当然分割されるとしても、実際に金融機関に相続分に応じた払戻を求めても、応じてくれない場合が往々にしてあります。
金融機関もリスクをとりたくないわけです。
ただこの場合は金融機関を相手に各相続人が預金払戻請求訴訟を起こすことができるというのが、実務の流れですので、最近は金融機関によっては柔軟な対応をしてくれるところもあるようです。
最後に少し細かいですが、平成19年10月1日より前に預け入れられた定額郵便貯金は、遺産分割の対象とすることができます。
理由は時間のあるときにお話ししましょう。