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以前、離婚事件と財産分与②(分与対象財産はいつの時点の財産を基準にするか)で、預貯金などについては別居時を基準としておおむね運用されていることについて説明しました。

別居時を基準とする、との考え方はそれなりの合理性があるのですが、基準時をどのように考えたとしても、実際に財産分与を受けるまでは様々なリスクがあります。

もっとも大きなリスクは、離婚に向けての話し合いをしている最中に、分与対象財産を管理している当事者が、勝手に預金などを引き出し、離婚成立の段階で対象となる預金の残高をゼロにしてしまうことです。

もはやこれは「信義」の問題であると思うのですが、これは別居から離婚成立までの期間中に、一方当事者の財産費消に対する具体的な歯止めが取りづらいことに原因があります。

もちろん、例えば調停や公正証書、判決には強制執行ができる効力(執行力といいます)がありますから、それらが成立すれば相手方の財産に対して強制執行をすることができますが、財産を費消するような相手方は強制執行を見越して事前対策をしていることが多く、功を奏しない場合が多いのが現状です。

そこで事前に対策を立てておく必要があります。

まず一つは、審判前の保全処分として預貯金等の仮差押を行うことです。

ここでいう差押とは、審判が下される前に財産が処分されることを防止するために、一時的に預貯金の引き出しができないようにしてしまうことです。

ただし、審判前保全処分は、要するに相手方の財産の自由な処分を強制的に制限することになりますから、財産の保全が認められるためには、保全の必要性、緊急性に加え、離婚の審判が認められる蓋然性などの要件を満たす必要があります。

また、相手方の財産の処分を制限する代わりに、保全を申し立てる人は、担保として裁判所が定めた保証金を法務局に供託する必要があります。

加えて、「審判前の保全処分」ですから、保全をするためには、後に審判を起こさなければなりません。

また、何よりも、相手の財産の処分を制限するわけですから、相手方の関係が険悪になることは必至ですので、申立をすると、その後の話し合いにとって障害になることがあります。

つまり、その使用には十分な注意が必要なのです。

そのほか、通常の民事保全を使う方法や、調停前仮処分などの方法がありますが、例えば調停前仮処分は審判前仮処分と異なり強制力がありませんので、いまいち使い勝手が悪いのが実情です。

「帯に短したすきに長し」。結局は当事者同士の信義に頼っているというのが、今でも主流であると言えるのですが、昨今相手方に代理人がついていても財産の散逸化、及び処分が行われる例がちらほら見られるようになりましたので、そろそろある程度のリスクを負ってでも審判前仮処分などの強制手段を積極的に用いる時期にきているのかな、と感じております。

何となく寂しい話ですが、依頼者の利益の実現のためには仕方がないことです。