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前回は、財産分与でよく問題となる「特有財産」(一方当事者の固有財産)について、概要をご説明しましたが、今回は各論として、よく問題となる事例について説明することといたします。
テーマは、不動産の財産分与と特有財産です。
そもそも離婚の際に不動産をどのようにして財産分与するかは、住宅ローンや居住の利益等も絡んでややこしい問題です。
特に、不動産の購入に際して、例えば配偶者が結婚する前から貯めていた定期預金を取り崩すなどして頭金にあてたり、配偶者の両親が頭金の一部を支払ってくれたりした場合の財産分与の計算は、特有財産も絡み難しい問題があります。
なお昨今、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度が成立いたしましたので、今後親から住宅資金が援助される場面が多くなることが予想されますから、離婚の際にこれらの事情がどのように考慮されるかは、ますます重要になってくるといえるでしょう。
さて本題ですが、一般的によく用いられる計算方法は、不動産購入に関する貢献度を割合で定め、それを現在の価値に引き直して財産分与額を計算する手法です。
一例を出しますと、例えば、5000万円の一戸建てを夫婦が購入したとします。
頭金が例えば2000万円であったとして、そのうちの1000万円を妻が父から贈与を受けて支払い、残りの3000万円は夫婦が住宅ローンとして支払い、ローンは完済したとします。
さて妻が父親から受領した1000万円は妻の特有財産ですので、これを5000万円から差し引きますと、4000万円が夫婦が共同して築いた財産となります。
そしてこの夫婦が共同して築いた財産の部分を割合に置き換えますと、4000万/5000万×100=80%となります。
対して、特有財産の割合は、1000万/5000万×100=20%になります。
これを総合すると、今回の不動産購入に対する夫と妻の貢献度を割合で換算しますと、夫は80%を半分にした40%、妻はこの40%に20%の特有財産部分を加算した60%になります。
そして本件不動産の現在の価格が仮に3000万円であるとすると、夫の取り分は1200万円(3000万円×40%)、妻の取り分は1800万円(3000万円×60%)になります。
この具体例は住宅ローンが完済されていることを前提としており、例えば住宅ローンが完済されていないような場合はもっと複雑な計算になります。
また、これまで述べた計算方法はあくまで一例ですので、調停や裁判手続の全てでこの計算方法が用いられているとは言い切れません。
ケースバイケースの場合もあるので、詳しくは弁護士にご相談されるといいでしょう。