これまで年金分割の制度についてかなり詳しく説明してきましたが、合意分割で按分割合について合意が成立し、その旨の書類が整ったとしても、それだけでは年金分割が完了したことにはなりません。
年金分割を完成させるためには、原則として離婚成立日の翌日から2年以内に、申し立てる人の住所地を管轄する年金事務所で、年金分割改定の請求(年金分割請求)をしなければなりません。
1 合意分割の場合
まず合意分割について説明しますと、離婚成立後、年金分割を求める人は、年金事務所に対して
① 標準報酬改定請求書(年金事務所に備え付けています)
② 請求者の国民年金手帳、年金手帳、又は基礎年金番号通知
③ 戸籍謄本、戸籍抄本等の婚姻期間等を明らかにできる書類
④ 以下のいずれかの書類
・年金分割請求をすること及び請求すべき按分割合について合意している旨を記載し、かつ、当事者自らが署名した書類
・公正証書の謄本若しくは抄録謄本
・公証人の認証を受けた私署証書
・調停調書の謄本又は抄本
・審判書、判決書の謄本又は抄本及び確定証明書
を予め準備した上で、申し立てる必要があります(あくまで一般的に必要とされる書類であり、詳しくは年金事務所にお問い合わせください)。
その際、念のため印鑑と身分証明書(免許証など)も持って行った方が、安全です。
2 3号分割の場合
他方3号分割の場合も、年金分割改定の請求(年金分割請求)が必要です。
必要書類としては、
① 標準報酬改定請求書(年金事務所に備え付けています)
② 請求者の国民年金手帳、年金手帳、又は基礎年金番号通知
③ 戸籍謄本、戸籍抄本等の婚姻期間等を明らかにできる書類
になります(あくまで一般的に必要とされる書類であり、詳しくは年金事務所にお問い合わせください)。
さて、以前もお話ししましたが、合意分割と3号分割の両方の申立が必要な場合の年金分割手続ですが、合意分割の請求で3号分割についても分割請求がおこなわれたとみなされます。よって、この場合でも、合意分割の年金分割請求書1枚だけを提出すればよいことになります。
3 その後の手続の流れ
その後、按分割合に基づき、当事者双方の年金記録の改定が行われ、改訂後の年金記録が、標準報酬改定通知書の形で当事者双方に交付されることになります。
以上が大まかな手続ですが、最後に一つ。
よく法律相談で、年金分割された後、年金を受け取る年齢になる前に元夫が死亡した場合は、厚生年金の分割が受けられなくなるのか、といった質問を受けることがありますが、その心配はありません。
分割されるのは年金記録であり、元夫の年金受給権ではありません。
つまり、年金分割がなされた時点で、分割を受けた側は改定された年金記録に基づく自分自身の年金受給権を持つことになりますので、その後元夫が死亡した場合でも、年金受取の可否に影響はないのです。