千歳法律事務所代表弁護士の千歳です。
さて、当事務所は、個人の依頼者と企業の依頼者がほぼ同数おりますが、個人の依頼者で特に多い事件が家事事件です。
そのなかでも離婚関係事件(離婚、親権、面接交通、養育費、慰謝料等)は常時10件程度はあり、その中身も離婚を求める側、離婚を求められている側、男性、女性様々です。
私自身は意識して離婚関係事件を優先して受任してきた訳ではないのですが、以前事件を処理した依頼者から新しい事件を紹介される、つまり「紹介事件」の中で離婚関係事件を占める割合が多く、これらの事件を丁寧に処理していった結果が現在の姿であると考えております。
さて、私は離婚事件の代理人として関わるにあたって心がけていることがあります。
これは、「コミュニケーション」です。
離婚事件で私のところに相談に来られている方は、その多くが既にインターネットなどで離婚に関する知識を収集されているなど、何らかの努力をされている方なのですが、それはどうしてかというと、今まで経験したこともない(中には複数回という方もおられるかもしれませんが)「離婚」という現実に直面して、漠然とした不安が強まり、何か知識を吸収して安心材料を見つけないことには落ち着かないからです。
これを言い換えれば「孤独感」といっても良いかもしれませんね。
もちろん、相談者の多くは、知識の収集の他に、親しい知人に対して相談をする方もおられますし、結局私のところに紹介で相談に来られる方はそのような経緯で私のことを知るのですが、 結局知人も、「離婚」に対してリアルな経験をしていないかもしれませんし、離婚の経験があってもそれは自分の体験した事実にとどまるのであって、いずれにしても相談者の心を最終的に満足させるものではありません。
それどころか、かえって誤った知識を得てしまい、問題解決から遠のくこともあるのです。
知人のアドバイスは大変ありがたいものですが、こと離婚に関してはうまくいかないことが多いのです。
このように、離婚に直面して当事者が感じるストレスの原因は、離婚につながる原因から来るストレスに加えて、情報不足から来る不安感や孤独感によって構成されます。
こうした多様なストレスを抱えている相談者に対して、私が弁護士として最初に対応できる行動は「コミュニケーション」であると考えます。
ただし誤解がないようにお伝えしますと、弁護士が行うコミュニケーションは、専門的技術的なそれであって、単なる雑談とは異なります。
つまり、限られた相談時間の中で、離婚関係事件に関する必要な情報を正確に収集することは当然であり、そのために十分なコミュニケーションを活用するというというのがまず大前提です。
ただ、私が心がけているのは、情報収集だけではなく、相談者が抱えている不安感、孤独感の中身を把握することです。
そして、相談者の性格、心情に配慮した上で、現時点での見通しを正確に伝え、必要とされる行為の内容(証拠収集、相手方との対応の仕方)を具体的に説明するなどして、相談者が今何を考え、どのように行動すべきなのか、についての指針をわかりやすい血の通った言葉で伝えるということです。
もちろんうまくいかないこともありますが、私としては、血の通った言葉で十分なコミュニケーションをとり、情報不足による漠然とした不安感をかかえ、孤独感で悩んでいる相談者の心に少しでも近づくということが、いわゆる離婚相談に対して弁護士に課せられた役割であると考えます。
なお、これも別の項でお伝えする予定ですが、弁護士は依頼者の心を理解しようと努力しますが、「当事者」そのものになることはできませんし、
そもそも当事者になってはいけません。
私が最近感じる感想として、「弁護士の当事者化」がありますが、真に依頼者のために活動できる弁護士というのは、専門的第三者として活動する弁護士だと私は考えます。
ですから、私の立ち位置としては、相談者とのコミュニケーションを十分にとり、相談者の心情に配慮しながらも、常に冷静な視点を見失わない専門的第三者ということになります。
このように、私は離婚関係事件に関して相談を受けるに際し、専門家として意識的に行動しておりますが、相談に来られる方はそこまで難しく考えなくても結構です。
ただただ、抱えている不安であるとか、知りたいことであるとか、そういった率直な思いをまずお伝え頂くこと、十分に吟味の上で示された弁護士(つまり私)の説明に対してまずは聞いて頂くこと、それで十分です。
それだけで、当面引っかかった「心」については解決の糸口が探れるかも知れません。
こうして初めて本質的な問題の解決、つまり離婚関係事件の解決に取りかかることができるのです。