千歳・大石法律事務所は横浜・関内の法律事務所です。

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(これからお話しするストーリーは手続を説明するためのフィクションであり、「ミナト木材加工株式会社」も特定の会社を想定したものではありません)

イントロダクション

A氏の場合①

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5 会社に関心をもつ意味って?

相談日当日、A氏は決算書、借入を明らかにするための書類、預金通帳、登記簿謄本など、弁護士から指示された資料を携えて事務所に向かった。

緊張の面持ちでインターホンを鳴らすと、おそらく事務員と思われる女性が、

「お待ちしておりました。どうぞお入り下さい」

との声と共に扉を開けてくれた。

多少緊張がほぐれたA氏は、その女性とたわいもない話をしながら、相談室の椅子に座り、出されたお茶をすすりながら弁護士が入ってくるのを待った。

遠くの方で男性の声がしていたが、その声が止むと暫くして、少し大柄の弁護士が心持ち笑みをたたえながら相談室に入ってきた。

怒られることはないとは思っていたが、さりとて愉快な話をするわけでもないので、A氏は若干拍子抜けした。

名刺を交換し、軽く自己紹介をした後、弁護士は、おもむろに

「さあ、どこからお話しをうかがいましょうか?僕はまだ事情のさわりしか聞いていないのでね。

それではまず手始めに御社がどんな会社なのかについて教えていただけますか」

といいながら、A氏の顔を見た。

「まだ本題には入らないのか・・緊張をほぐすためかな」

とA氏は思ったが、弁護士は笑みを見せながらも真剣な様子なので、ミナト木材加工株式会社が歴史ある会社であること、自分が3代目の社長であること、主たる営業は木材加工だが、昨今は海外の工場との関係で価格競争力が落ちていること、などについて一気に話した。

弁護士は、少し身体を前に乗り出し気味にしながら、

「横浜で昔から木材の加工をやっていたというのは、何か事情でもあったんですか。例えば船の建造で使う木材を加工していたとか・・」

と、ミナト木材加工株式会社の成り立ちに興味を示してきたので、A氏は、

「もともと横浜には東京の木場と同じような貯木場があったんです。それで、私の先々代の社長が貯木場に近い磯子の地で木材を加工する事業を始めた、というわけです。

当時は貯木場の近くにいくつか造船所があったそうで、私どもの会社も木材を

加工して卸したりしていたようですが、今はそういった造船所もなくなりましたので、今では専ら建築資材や家具の材料などを製造しています。」

と話した。

「確かに今漁船などもFRP船だしね。で工場は磯子のどこにあるの?」

あまりに会社のことを細かく聞くので、A氏は、

「私の会社に関心をもっていただくのはとても光栄なのですが、随分マニアックなことまで聞いてきますね。どうしてですか?」

と弁護士に質問した。

これに対し、弁護士は、

「いやあ。僕は、ものを作る話や商売の話を聞くのが好きなのでね。失礼しました。

ただ、今日は会社をこれからどうしていくのか、について話を聞きに来たんでしょう?

それなら、まず最初にその会社のことを知らなければならないよね。まず、あなたの会社に関心を持てるか、そこが大事だと思うんですよ。」

A氏は、ようやく意味を理解し、その後は弁護士と日本や海外の木材事業を巡る話に花を咲かせた。

次回に続く)