
(これからお話しするストーリーは手続を説明するためのフィクションであり、「ミナト木材加工株式会社」も特定の会社を想定したものではありません)
9 税理士への相談
翌日、A氏は、毎年確定申告を依頼している税理士事務所に向かった。
税理士は、長年格安で会社の確定申告を請け負ってもらっていた古くからの知人であった。
決算期でもないのに突然事務所に現れたA氏の姿を見て税理士は少し驚いた様子であったが、A氏から会社の資金繰りの話を聞いて、全ての合点がいったようであった。
税理士は、もともと、ミナト木材加工株式会社の滞納税金について問題意識をもっており、度々A氏に対して滞納の解消をアドバイスしていたのである。
A氏は、税理士に対し、破産手続にあたって準備しておいた方がよい書類について聞いたところ、税理士は、
「帳簿」としては、①総勘定元帳、②仕訳帳、③現金出納帳、④売掛金元帳、⑤買掛金元帳、⑥固定資産台帳、⑦売上帳、⑦仕入帳などがあること。
「書類」としては、①棚卸表、②貸借対照表、③損益計算書、④注文書、⑤契約書、⑥領収書などがあること。
その他に、①賃金台帳、②出勤簿、③労働者名簿なども重要であること。
破産手続の際には、おそらくこれらの提出が求められるであろうから、会社として事前に準備しておくようにと話した。
A氏は会社に戻り、会計担当社員と内密に話をしながら、必要な書類を揃え、明日の弁護士との相談に備えた。
多くのことが一度にばたばたと決まっていくことにA氏としては不安がないわけではなかった。ただ、決断が遅れることによる事態の悪化だけは避けたいとの一心で、経営者としての責任から、一晩掛けて書類を準備した。
(次に続く)