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相続税の申告をするに当たって、土地については、その価額を評価する必要があります。その評価は、原則として財産評価基本通達によることになります。

その際、地積の大きな土地については、財産評価基本通達24-4の定める広大地として、その価額が相当低く評価される場合があります。

 

広大地に当たれば、土地の評価額が半分近くになるため、インパクトがかなり大きいので、実際に申告を行う際、広大地に当たるか否かの判断がとても重要となります。

 

本コラムの筆者が国税審判官として国税に係る不服申立ての審理を行っていた際も、広大地の問題を数多く取り扱いました。

 

具体的に広大地に当たるための要件は何かというと、財産評価基本通達24-4の定めによれば、

 ①その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大であること

 ②開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地(道路の設置など)の負担が必要であること

 ③マンションの敷地として適切でないこと

 ④大規模工場用地に当たらないこと

 

以上が、広大地に該当するための要件です。

 

ここで、広大地の評価を下げる趣旨を簡潔に説明すると、

 評価の対象となる土地を有効に利用しようとする場合には分譲宅地化することが合理的であり、かつ、分譲のためには道路を設置する必要があるというのであれば、その道路部分は潰れ地となって全体の価値が下がるため、土地の評価を下げる。

というものです。

  

このような場合、本来であれば、潰れ地となる地積を算定して、その分を減額すればよいですが、複雑かつ曖昧な評価になってしまうため、現行の通達では、土地の地積などに応じて減額率を決めているのです。

 

では、広大地の評価に当たって、具体的に何が問題になるのでしょうか。

上記①から④の要件のうち、特に②(開発する場合に公共公益的施設用地の負担が必要か否か)が問題となることが多いです。

 

上記②の要件の判断は難しいですが、ここでは、筆者の考え方をまとめていきます。

 

まず、上記②の点で、主として問題になるのは、

 道路を設置して開発する方法と

 道路を設置せずに開発する方法

 どちらが経済的に合理的であるのか

ということです。

 

下の図(土地の下側で道路に接面)でいうと、区割例1では道路(公共公益的施設用地の負担)が必要ということですが、区割例2と3では不要ということになります。

 

(区割例1・中央道路)   (区割例2・羊羹切)   (区割例3・路地状開発)

             

          

このような場合に、税務署や国税不服審判所において、よく検討されるポイントは、

 (1) 地域における標準的な宅地の地積による分割であるかどうか

 (2) 法令に反しない区割りであるかどうか

 (3) 容積率や建ぺい率の観点での効率性

 (4) 地域の一般的な開発事例との比較

です。これらのポイントは、広大地に関連する書籍などでもよく挙げられています。

 

ただし、これまで実際の審理に携わり、様々な裁決例を見てきた感想からすると、微妙な事例において広大地に当たるとの判断が望ましい納税者の立場にとって、有用なポイントは(4)の事情くらいです。

(1)(2)については、微妙な事案でそもそも問題になることはありませんし、(3)については、広大地を主張する側にとって有利に働くことはありません(通常、路地状開発においては、路地部分を含めて容積率・建ぺい率が決められます(広大地否定の一事情)が、場合によっては含まれないこともあるため、そういった場合にはニュートラルな事情になります。)。

 

ただし、筆者の見解としては、(4)の事情は、それ程重視されるべきではないし、今後の国税不服審判所においても殊さら重視されることは、必ずしも多くないのではないかと考えています。

 

というのは、周りの土地でどのような開発がされているかを見ても、土地の地積や形状などの条件が異なる以上、参考程度にすぎず、評価の対象の土地の合理的な開発方法を決める上で決定的な事情にはならないためです。

  

一方、相続後に評価の対象の土地そのものを専門業者などの第三者に売却した場合において、その専門業者が独立した立場で合理的に開発を行っているときは、重視すべき一事情になるといえます(これと意見を異にする裁判例もあるようです。)。

どのような土地の開発が経済的に合理的か否かは非常に曖昧であり、税務署も国税不服審判所も裁判所も、土地開発のプロフェッショナルではないのですから、独立した専門業者による合理的な判断が存在するのであれば、それは重視せざるを得ないといえます。

 

ただし、合理的な開発方法とは客観的なものであるべきですから、独立した立場での開発結果があるとはいえ、それに縛られるということはなく、あくまで重要な考慮要素の一つにとどまるといえます。

 

 

その他、以上の(1)から(4)のポイントとは別に重視すべきポイントは、想定する路地状開発における路地部分の状況です(路地部分とは、区割例3でいう旗竿状の宅地の道の部分をいいます。)。

 

例えば、路地部分の長さが40メートルになるような場合、路地部分の一部を駐車場として有効利用できるとしても、これを合理的というには疑問が生じますし、建築基準関係法令による制限もついてきます。

また、以下の土地(左図)のように、開発想定における路地が4段になるような場合には、路地部分を駐車場として有効利用できることに鑑みても、なお道路を設置した方が合理的といえます。

                                                                                  

 路地部分は、駐車場として有効利用できても、整形地部分の価値に劣ることは明らかですので、路地部分があまりに大きいと全体の価値を毀損してしまうこと、路地が長い宅地については建築基準関連法令による制限もついてくることなどが理由です。

 

最後に、評価の問題ですから、以上の点に鑑みても微妙な場合が数多くあると思います。

このとき、国税不服審判所などではどのような判断が下されるかということについては、

  どの開発方法も甲乙つけがたいというような場合、敢えて道路を設置する必要はない。

という判断が出る可能性が高くなるものと思います。

 

 弁護士 山村 健一