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相続税の申告において、相続した土地が広大地に当たるかどうか判断に迷う場合、

 ①広大地として申告した上で、税務署からの処分があれば争うという方法と、

 ②広大地ではないと申告した上で、後から広大地として税額の減額を求める更正の請求をする方法があります。

 

どちらの方法によるかは、税理士の先生も含めて、悩むことが多いと思います。

実際に、筆者が国税審判官として審理に当たっていたころには、いずれの方法をとる事案もありました。

 

今回は、以上の方法のメリット・デメリットを見ていきたいと思います。

 

 まず、一般的に考えられているメリット・デメリットを簡潔に整理します。

   ①広大地として申告する場合

     メリット

      ・税務署も広大地に当たると判断すれば、余計な手続を経なくてよい。

      ・税務署にとっては、広大地に当たるかどうか微妙な場合において、広大地を否定する心理的な
       ハードルが上がる。

     デメリット

      ・税務署が広大地と評価した場合に、過少申告加算税が賦課される。

      ・延滞税の納付も必要となる。

   ②広大地でないと申告・納税し、後から更正の請求をする場合

     メリット

      ・過少申告加算税や延滞税の納付の必要がない。

     デメリット

      ・更正の請求の手続を減る必要がある。

      ・税務署にとって、広大地に当たるかどうか微妙な場合においても、納税者がいったんは認めている
       のだから、広大地を否定する心理的なハードルは低い。

 

 では、以上について、細かく説明していきます。

 

   1 まず、加算税・延滞税についてです。

 

     ①の方法をとった場合、当初の申告の上では、広大地の評価を行わない場合と比べ、土地の評価額が
    相当小さくなり、その分、相続税の額も低くなります。

     そこで、税務署が、その土地が広大地に該当しないと判断すれば、その分相続税の額が高くなるため、
    修正申告を求められた上で、これに応じなければ相続税の増額の処分が下されることになります。

     これに加えて、過少申告加算税も賦課されます。

     さらに、本来あるべき相続税を納めていないわけですから、延滞税を納付する必要も生じます(なお、
    延滞税は処分を経ずに当然に生じるものです。)。

 

     なお、加算税は申告の不適正に対するもの、延滞税は納税していないことに対するもので、別物です。
    適切な申告をしても納税しないときは、加算税はつかないが延滞税はつくということになります。また、
    申告していない場合であれば、納税していることも考え難いので、通常は、加算税・延滞税両方がつき
    ます。

 

     そして、広大地に当たるとして相続税の増額の処分があった場合に不服があれば、国税不服審判所
    に不服申立てをすることになります。

  

   2 次に、広大地に当たるか否かの判断に関する、当局側のハードルについてです。

 

     税務署の立場に立った場合、これは、調査・審理の担当者や決裁者にもよるため、一概にはいえません
    が、

        広大地として申告されたものを否定する処分を下すのと、

        広大地でないとの申告の変更を求める更正の請求について、拒否する処分を下すのとを
        比較すると、

    「心理的に後者の方がやりやすい」という余地はありますが、実際には、大きく変わることはないという
    べきです。

     同じ土地の評価の事例について、

      「当初の申告から自信をもって広大地としているのだから、広大地なのだろう。」とか、

      「当初の申告では広大地でなく自信がないように見えるので、広大地に当たらないのだろう。」と

    税務署が考えることは、ほぼ皆無といっていいです。

 

     さらに、国税不服審判所や裁判所になると、それ以上に、広大地の該当性の判断において、①と②の
    いずれの方法をたどってきたかについて考えることはありません。

 

     なお、理論的な話として、

       相続税の増額処分(①の場合の税務署長の処分)と

       相続税の更正の請求に理由がない旨の処分(②の場合の税務署長の処分)について、

    それぞれの不服申立てなどの審理における違いとしては、事実の立証責任が変わる点があげられます。

     すなわち、増額処分の場合、事実の立証責任は税務署長側にあり、更正の請求に理由がない旨の処分
    の場合、事実の立証責任は納税者側にあるという具合です。

 

     ここで、立証責任とは、事実の有無がわからないとき、立証責任を負う側に不利な認定がされる
    ということです。

 

     これを広大地の評価についてみると、実際に具体的な争いとなる点は、客観的な事実そのものでは
    なく、評価であり、立証責任どうこうという話になることはほとんどありません。

     ですから、①と②のいずれの方法をたどって紛争になったとしても、その結論に影響を与えることは
    ないといえます。

 

  ということで、以上のことを見ると、単純に②の方法の方がよいのではないかとも思いますが、税務署に弱気を見せるべきでないという納税者やその代理人もいると思いますし、広大地に当たることが明白だという場合もあるので、事案に応じた対応が必要になります。

 

弁護士 山村健一


相続税の申告をするに当たって、土地については、その価額を評価する必要があります。その評価は、原則として財産評価基本通達によることになります。

その際、地積の大きな土地については、財産評価基本通達24-4の定める広大地として、その価額が相当低く評価される場合があります。

 

広大地に当たれば、土地の評価額が半分近くになるため、インパクトがかなり大きいので、実際に申告を行う際、広大地に当たるか否かの判断がとても重要となります。

 

本コラムの筆者が国税審判官として国税に係る不服申立ての審理を行っていた際も、広大地の問題を数多く取り扱いました。

 

具体的に広大地に当たるための要件は何かというと、財産評価基本通達24-4の定めによれば、

 ①その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大であること

 ②開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地(道路の設置など)の負担が必要であること

 ③マンションの敷地として適切でないこと

 ④大規模工場用地に当たらないこと

 

以上が、広大地に該当するための要件です。

 

ここで、広大地の評価を下げる趣旨を簡潔に説明すると、

 評価の対象となる土地を有効に利用しようとする場合には分譲宅地化することが合理的であり、かつ、分譲のためには道路を設置する必要があるというのであれば、その道路部分は潰れ地となって全体の価値が下がるため、土地の評価を下げる。

というものです。

  

このような場合、本来であれば、潰れ地となる地積を算定して、その分を減額すればよいですが、複雑かつ曖昧な評価になってしまうため、現行の通達では、土地の地積などに応じて減額率を決めているのです。

 

では、広大地の評価に当たって、具体的に何が問題になるのでしょうか。

上記①から④の要件のうち、特に②(開発する場合に公共公益的施設用地の負担が必要か否か)が問題となることが多いです。

 

上記②の要件の判断は難しいですが、ここでは、筆者の考え方をまとめていきます。

 

まず、上記②の点で、主として問題になるのは、

 道路を設置して開発する方法と

 道路を設置せずに開発する方法

 どちらが経済的に合理的であるのか

ということです。

 

下の図(土地の下側で道路に接面)でいうと、区割例1では道路(公共公益的施設用地の負担)が必要ということですが、区割例2と3では不要ということになります。

 

(区割例1・中央道路)   (区割例2・羊羹切)   (区割例3・路地状開発)

             

          

このような場合に、税務署や国税不服審判所において、よく検討されるポイントは、

 (1) 地域における標準的な宅地の地積による分割であるかどうか

 (2) 法令に反しない区割りであるかどうか

 (3) 容積率や建ぺい率の観点での効率性

 (4) 地域の一般的な開発事例との比較

です。これらのポイントは、広大地に関連する書籍などでもよく挙げられています。

 

ただし、これまで実際の審理に携わり、様々な裁決例を見てきた感想からすると、微妙な事例において広大地に当たるとの判断が望ましい納税者の立場にとって、有用なポイントは(4)の事情くらいです。

(1)(2)については、微妙な事案でそもそも問題になることはありませんし、(3)については、広大地を主張する側にとって有利に働くことはありません(通常、路地状開発においては、路地部分を含めて容積率・建ぺい率が決められます(広大地否定の一事情)が、場合によっては含まれないこともあるため、そういった場合にはニュートラルな事情になります。)。

 

ただし、筆者の見解としては、(4)の事情は、それ程重視されるべきではないし、今後の国税不服審判所においても殊さら重視されることは、必ずしも多くないのではないかと考えています。

 

というのは、周りの土地でどのような開発がされているかを見ても、土地の地積や形状などの条件が異なる以上、参考程度にすぎず、評価の対象の土地の合理的な開発方法を決める上で決定的な事情にはならないためです。

  

一方、相続後に評価の対象の土地そのものを専門業者などの第三者に売却した場合において、その専門業者が独立した立場で合理的に開発を行っているときは、重視すべき一事情になるといえます(これと意見を異にする裁判例もあるようです。)。

どのような土地の開発が経済的に合理的か否かは非常に曖昧であり、税務署も国税不服審判所も裁判所も、土地開発のプロフェッショナルではないのですから、独立した専門業者による合理的な判断が存在するのであれば、それは重視せざるを得ないといえます。

 

ただし、合理的な開発方法とは客観的なものであるべきですから、独立した立場での開発結果があるとはいえ、それに縛られるということはなく、あくまで重要な考慮要素の一つにとどまるといえます。

 

 

その他、以上の(1)から(4)のポイントとは別に重視すべきポイントは、想定する路地状開発における路地部分の状況です(路地部分とは、区割例3でいう旗竿状の宅地の道の部分をいいます。)。

 

例えば、路地部分の長さが40メートルになるような場合、路地部分の一部を駐車場として有効利用できるとしても、これを合理的というには疑問が生じますし、建築基準関係法令による制限もついてきます。

また、以下の土地(左図)のように、開発想定における路地が4段になるような場合には、路地部分を駐車場として有効利用できることに鑑みても、なお道路を設置した方が合理的といえます。

                                                                                  

 路地部分は、駐車場として有効利用できても、整形地部分の価値に劣ることは明らかですので、路地部分があまりに大きいと全体の価値を毀損してしまうこと、路地が長い宅地については建築基準関連法令による制限もついてくることなどが理由です。

 

最後に、評価の問題ですから、以上の点に鑑みても微妙な場合が数多くあると思います。

このとき、国税不服審判所などではどのような判断が下されるかということについては、

  どの開発方法も甲乙つけがたいというような場合、敢えて道路を設置する必要はない。

という判断が出る可能性が高くなるものと思います。

 

 弁護士 山村 健一